第4話





 その次の日だった。



 「平田和美 青櫛研究所前で遺体となって発見 享年28歳 身体中に刃物の跡」



 この朝一番のニュースは、僕だけでなく、世界を震撼させただろう。

 何より印象的だったのは、彼女によって書かれたと思われるダイイングメッセージだ。


 それは、血で書かれた

「GEMA」

 という四文字。



 テレビでの中では、"発明品に対しての強い思いがあった"、"何かの頭文字"など、様々な議論が繰り広げられていた。



 それを見ていた僕は、今すぐ研究所に行かなければならない気がした。しかし、結局、家を出るのは夜になってしまった。




 あたりは真っ暗で、静まり返っていた。

 僕は自転車にまたがり、青櫛研究所へと向かった。


 途中、急に横から人影が飛び出してきたので、僕は慌ててブレーキをかけた。

 もう少しであたる、ギリギリのところで止まった。


 「おい、あぶないだろ!」

 目の前の人影の顔を見上げて言った。






 僕はまた心臓が止まりそうになった。






 「いやあ、ごめんね、どうしても君と話がしたかったんだ」




 そこにいたのは僕だった。紛れもない僕だ。


 着ている服が違うだけで、それ以外は“すべて”同じだった。





 「面食らってるようだね、まあ無理もないかな」


 「...どういうことだ」絞り出した言葉がこれだった。



 「どういうことって、こういうことさ。自分と似ている人間が、世の中に3人はいるって、有名な話だろ?」

 「じゃあ、お前は俺のそっくりさんってだけなのか?」

 「いや、まあ、俺たちの場合は・・・」


 そこまで言ったところで、近くで急にパトカーのサイレンが大きく鳴り響いた。

 「おっ、来たか。逃げるぞ」

 そう言った“僕”は、僕の後ろに回り込み、自転車を猛スピードで押し始めた。僕は慌ててハンドルを握った。


 「左だ!左!」

 “僕”が叫ぶ。

 電信柱をギリギリのところで躱すと、“僕”は自転車の後ろに飛び乗り、僕と共に坂道を猛スピードで下って行った。

 すると間も無く、

 ドッ、という音と同時に、自転車が宙に舞い、僕は地面に叩きつけられた。



 僕は全身の痛みに悶えながら、力を振り絞って立ち上がり、だいぶ先に居た“僕”の後を無我夢中で追いかけた。




まるで、そこに答えがあるかのように。





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