第7話迎え入れられる死

大空洞の光る泉に近づいた颯太は息を飲んだ。神秘的で幻想的な泉の真上。そう、大空洞の天井を複数の巨大な影がゆっくり円を描くように動いているではないか。

 見覚えのある動きに魚だと直感した颯太は、泉に勢い良く飛び込んだ。

 この洞窟がどこまで続くのか分からなかったためここで食料調達をしようと考えたのだろう。

 だが颯太は飛び込んだ瞬間、自分が行った行為を悔やむことになる。

 泉はかなり深く水底には宝石のような色とりどりの水晶が張り巡らされていたがそれを護るかのように六匹の巨魚が洞窟の天井と同じ動きをしていた。

 

 ──嘘だろっ!?天井の影だから小魚が巨大化されたのかとばっかり思ってたら、なんだあれ!全長十メートルはあるよな……さっきタクマに脅かされた魚とは比にならんぞ。っっつばっ気付かれた!あんな勢いで飛び込むと流石に気付きますよねぇ……やばいやばいっ!

 

 一匹の巨魚がギロッと颯太の方を向いたとき目が合ってしまい大口を開けながら物凄いスピードで泳いできた。

 颯太は大慌てで陸に上がり泉から少し距離を取ったところで両手を膝につき荒い息を整える。

 

 「はぁ……はぁ、ここまでは……流石に……来ないだろう」

 

 そんな簡単に回収されそうなフラグは案の定即座に回収される。

 泉を勢い良く飛び出た巨魚にはいつの間にか四つの足が生えており、ウーパールーパーのような姿で洞窟内を振動させた。

 ウーパールーパー擬きはゆっくり首をひねり、侵入者を視認し身体の向きを変えて、重量感のある足音で侵入者を追いかけた。

 だがウーパールーパー擬きの動きは余りにもノロく颯太を一瞬、緊張から解いた。

 

 「ははっなんだこいつ陸に上がったらスピード激減じゃないか。大したことないな」

 

 安心したのもつかの間、ウーパールーパー擬きは力をためるように短足を少しばかり曲げ、ためた力を全て跳躍力に使い、弧を描くようにではなく一直線に襲いかかる。

 

 「──うおっ!」

 

 颯太は飛び込んできた大口に驚き、見事な反射神経で真横に跳んだ。

 強風と共に横切った大口は勢い衰えず大空洞の壁に顔全体が埋まった。

 短い手足をバタバタさせてる姿はなかなか可愛らしかったがそんな余韻に浸っている暇ではない。

 物凄い突進のお陰で他の巨魚にも気付かれてしまい、次々と泉から飛び出てきた。

 

 「あ~実にまずい……一匹だけならワンチャンあるかと思ったが、こりゃ無理っぽい……」

 

 気付くともう目の前に五つの大口が颯太めがけて飛んでいる。逃れる術を持っていない颯太にとってこれ以上とない絶望的状況。

 

 ──新しい世界もここで終わりか……

だがそれがどうした、俺はこの世界に来ることを望んだか?否、騙されて転生しただけだ、なら生きる必要はないのではないのか?

 

 次の瞬間颯太は大口の前から姿を消した。

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