第十一話

30分前行動を少ししたくらいで、つく時間も30分前、ということとは限らなかった。


「くそー!さっきのやつがあそこにいなければ俺、確実に30分前についてたぞ!」


「別にいいじゃない、いつもよりはましでしょ?」


健斗がそうだそうだと笑うと、神崎は周りを見渡して、それにしても今日は人が少ないねと言った。


「受験日、って訳では無いよね?今日何日だっけ。」


「16日だな、でも流石に早すぎじゃないか?かと言って、この4人しか教室にいないのも不愉快だろ。」


時計を見れば8時25分。本鈴がなるまであと5分だった。いや、いつも俺がつく少し前の時間でもあるから、あきかにこれはおかしいって言える。


「お母さんの所、いってみよっか。何かわかるかも。」


いや、でももう鳴ってしまう時間だ。流石に俺たちまで遅刻っていうのも不満なものだ。闇雲に悩んでいると、丁度ドアの引く音がした。


「おはよ〜みんな〜」


神崎先生だ。入ってきて四人しかいない教室になんも反応していない。


「先生!今日四人しかいないんですけど、何でですか。」


久万が聞くと先生は驚いて私たちを見た。


「もう忘れちゃったんですか?昨日言ったじゃないですか〜。今日は、生徒会総選挙の会場設置で皆さん体育館に行っていますよ。D組は殆どが委員会に入ってますからね。みんなお仕事なので遅れると言っていました!」


先生が満足そうに言うと、健斗が納得したように頷いた。けれど久万も委員会に入っていたみたいで何でかな。と言っていたが、久万は美術部だから抜かされたんだと健斗に言われていた。ふたりの入る美術部は行事の度に絵を書いている。何といっても二人のスゴイところは、普通の人が発想することができないことを自分たちで考えて作ることだ。また、このふたりは夏のコンクールで金賞をとっている。俺の画力を想像したら……ダメだ。考えてはいけない。やめたやめた。



そんな後、一時限目が始まる数分前にずらーーーーっと人が教室に一斉に入ってきた。帰ってきたのか、おかえりーと言うとみんな楽しそうだった。……この後、寂しかったって先生が怒るんだよなぁ。それで皆で笑うんだよ。


「皆さんおかえりなさいです!寂しかったですよ。四人しかいなくて〜」



その通りみんなも笑っていた。



…………あれ?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もう僕はここにいなかった。 暁千鶴 @kiko_chizuru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ