絡み始める二つの日常

第十話


光輝side


僕は昨日より30分も早起きをした。そして、30分も家を早く出た。一つ目の信号で止まり、横断歩道の向こう側で、ひとりで本を読む朝倉花衣がいるのを見つけた。赤から青に変わる前に朝倉がこっちに気づくと凄い顔でこっちを見つめた。……見た感じ、僕がこんなに早く来たのに驚いたんだろう。青に変わって彼女に近づいた。その途端何を言われるのやら、


「嘘ー!中島がこんな時間にここにいるよ!? 幻覚を見てるみたい……。」


「そう言われると思ってた。だが俺は今日は遅刻ギリギリになったりしないからな!」


ふーんと笑いながらじゃあ、行くね。と、朝倉は学校へ向かって言った。やがて彼女が見えなくなると、僕も歩き出した。瞬間のことだ。


「よっ、光輝。お前今日は早いんだな。」


「そうだよ。すごい珍しい」


振り返ると、健斗に久万、そして神崎がいた。神崎は美奈子先生の妹。結構内気に見られがちだが、話すと面白い。けれど、朝は眠くてあまり話さない。


「俺、今日30分も早く起きたんだぜ!」


と1発大声で言ってみると声を揃えて「お〜!」と、拍手をしていた。……そんなに珍しいか。いや、珍しいな。

それからかれこれ話をしながら学校へ向かうこと早10分。亦部の門を潜った。


昇降口に入ろうとした時、ふいに神崎が声を上げた。


「あの人、は? なんか中島くんの下駄箱除いてるけれど……」


「本当だ、誰だろうな。」


俺は見たことない男子に近づき、何をしてるのかを見た。


なにかブツブツ言っているのがわかる。


「中島光輝」


俺の名前を……?どうしてだ。


「ねえ」


と一声かけてみても気づかない。この人、ある意味鈍いな。もう少し近づきもう一回呼びかけてみた。すると今度は反応して気づいたので続けて話してみる。


「ねえ、誰だか知らねぇけど、俺の下駄箱になんか用か?」


何となく、こいつが中島光輝か。と言った気がした。少し時間が過ぎた後、急にそいつは後ろを向き、最後に捨て台詞を残していった。


「別に用なんてない。」


そして行ってしまった……。誰だったんだ。後ろから久万が冷たかったね。と大きめな声で言った。この距離なら聞こえてるのではとも思ったが、僕的には聞こえてもいいかなって思う。だって事実だし。そして何故だろう。一瞬神崎がニヤけるように笑った気がした。


後で先生に誰か聞こうと思いを留め、みんなで教室へ上がった。ヘッドフォンをした変わった人といったら分かる人はわかるよな。多分。

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