第四話
『キーンコーンカーン……』
「間に合ったか!?」
なんとかギリギリ、チャイムがなっている最中に教室のドアを開けることができた。皆はもう座っていて、担任は……まだ来ていない。
「おい中島おせえっての!」
「また寝坊したのー?」
わるいわるいと言いながらゆっくり歩き、一番窓側の前から3列目の席に座る。外からの日差しが机に反射して少し眩しかった。それに冬とは思えない暖かい風が入ってきた。
3年4組は、結構皆仲が良くて有名だ。僕もここでの友達は僕も結構いる。毎日休み時間や放課後に遊んだり勉強したりそのなかでも一番仲がいいのはコイツ、
「光輝、おせえよ」
「わるいな、考え事してた。」
「お前が考え事?はっ、今日は午後にでも雪が降りそうだな。」
「うるせー」
こんな奴でも凄いところはある。健斗はああ見えても美術部で、確か夏では金賞を取ったんだ。見に行ったけれど、なんというか芸術的すぎて、僕には絵的美センスは無いけれど、感動する作品だった。それに彼女もいる、今アイツが隣で話している女子、
その二人は
やがて担任が入ってきた。名前は
「さ、皆さん。高校入試のための勉強は順調ですか?もうあと何ヵ月かすれば本番です。毎日欠かさず進んでいきましょう。」
・・
『キーンコーンカーンコーン』
帰りのチャイムが鳴った。薄々気づいていたけれど、僕は多分未来の事が分かっているようで分かっていない。だって今日の理科の実験、結果も知っていたし、予想通り、クラスの男子が実験器具を落としてばらまいて怒られたのも覚えていた。いや、やっぱり知っていたなのか?朝も同じことを思ったが、理科の実験の内容や、英語の小テストの英文の答え、ここまで事前にわかったとなれば少し話が矛盾してしまう。けれどお弁当のときや、休み時間のことはほとんど覚えていなかった。ところどころ覚えているってことなのか。この現象はなんなんだ。予知夢でも見たのか。でも昨日見た夢は……。ひとつ考えが頭をよぎった。もし仮に僕が、時間をループしていたとしたら?と。えられない話でもない。だけれど逆にそれを裏付ける証拠もない。変な考えが出たものだ。頭の裏側の小さな隅っこにでもしまっといてあげよう。
それにしても今日の帰り道は人で溢れ帰っている。そうか、もうそろそろクリスマスなのか。駅の前では、広場の中心にクリスマスツリーが飾られ、お店にもそれらしき飾りがたくさん飾られていた。広場にも人が多く、二人でくっついた男女、今で言うならば、リア充が至るところに散らばっている。皆笑顔だった。もう今年で15になった僕には、当然、サンタさん と言うものは来ないわけで、中島家ではそのような行事はまっさら無縁だった。クリスマスプレゼントもない。ケーキも無く、パーティーすらない。いつも24、25日は五月蝿い祝日。という風にとらえてきた。中学の最後くらい皆とクリスマスパーティーでもしたいな。なんて思っていたら、一瞬変な記憶がフラッシュバックした。このツリーのまえで一人の女の子が倒れているのに誰も助けないこと。けど僕がその子に声をかけて…。そこで記憶は閉じた。
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