第三話
「光輝、ご飯出来たわよ。早く座りなさい。」
いつもと同じ、うまそうな味噌汁の匂いがこっちまでじわじわと届いてきた。いや、いつもよりたくさん匂う。なんだ、早起きは三文の徳ってこういうことなのか(?)
いつも僕が起きる頃には食べ終わってるかなにかで、その匂いは微かだった。暫くは早く起きようか。床に手をついて、その場から立ち上がると、食卓へ向かった。恋歌が早く食べたそうに足をバタつかせて、頬を膨らましている。こういうところだけは、まだまだコイツも子供だ。やがて隣に座ると、皆で手を合わせ、いただきます、と声を揃えた。恋歌は一瞬で箸を持ち、白いご飯に飛び付く。あれ、ツンデレだったよな…。ツンデレな妹のはずなのに今のその光景はツンデレの要素が何一つ無いぞ。 ………いけないいけない、また口が悪くなってきたようだ。今日は空回りしないって決めたんだった。冗談はさておき、いつも恋歌はこういうやつだった。今日も変わりはない。今日は早く過ごす習慣だ。そうしよう。学校だって始まる30分前についてやる。そう思って時計を見る。学校が始まるのが8時。今は…7時15分。家から学校まで20分はかかる。よし、やばいぞ。もうでなくちゃならない。走ろう。
「そろそろ行ってくる!ごちそう様」
「兄貴ミカン食べないの?なら貰っちゃうわ」
「勝手に食え!」
「お弁当忘れんじゃないぞ光輝。」
「気を付けるのよ~!」
今日の授業の教科書が入ったリュックを背負い、よくある日常アニメのように急いでドアを開け、走ってスタートした。何時もは時間ギリギリにつくがために、急いで登校しているが、今日は何だかその足も軽々しかった。でも軽々しい足も肉体的には固く、全く最近運動していない人の筋力に近かった。僕も中学一年の一年間、不登校で全く外に出ない生活をしていたから結構そういうのには詳しかった。よくわかんないけど。
とにかく、俺は毎日朝走っているはずなのに足が重いのは気がかりだった。最近ずっと寝ていた気がする俺の体と心はこの走ることの負担、物忘れの酷さにも繋がるものなのか…?ふいに走るのを止めていた。じっくり考えながら、歩調をゆっくりにしてずーーーっと、ずーーーっと、ずーー「おーい光輝ー!!」
ようやくその声に気づいた。その声は僕の真後ろから。振り返ると少女は笑いながら言った。
「何ボーッとしてるの朝から(笑) 何時もは安定の遅刻遅刻走りだったのにどうしたのよ、そんなにここを早く通るとは思わなかったわ」
と言ってはしゃいでいるのは、小学校が同じだった、他校の女子、
「悪いな、考え事してたら我を忘れてたよ。」
「何々~。中島でも考え事ってしたんだね。意外だなあ。それにさ、なんか変わってない?」
「変わった?変わったって何が。」
「うーん。……なんか、毎日見てる気がするんだけど、なんかいつもと違う気がする……。」
やっぱり他人からでも、なにかがおかしいって解るんだ。やっぱり僕はいつもと違うのか……。それって____
『命と同じくらい大切なものはなんですか』
あの夢が、一つの原因なのか。
やっぱりそうだよな、なにかと考えている間に性格が朝とまるで別人のように変わっている気がした。大したことはない、口が悪くなっただけだ。また少しかしこまった性格に戻るかもしれないけれど、僕はこのままでもたいして違和感はなかった。
『キーンコーンカーンコーン……』
ひとつにまとまったとき、チャイムが丁度鳴った。いけね遠くで、30分前につくはずだったんだ。このチャイムは予鈴。ってことは……
「あと五分じゃねぇか…!!!!」
いつもと同じ意味で走ることにはなったが、なにか自分のなかでつかめたきがした。それと、なにかが開いた予感がした。あくまで予感だけど。
朝倉から「うぉ、戻った」と声がした。そうだな、やっぱり今の僕は、今の俺なんだな。じゃあな。と朝倉に手を降り、その場を後にした。
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