処罰

僕は世の中の事を余りにも甘く見ていた…。

PCは初期化されてしまった。

損失分は深刻。

その事が関係いているかはわからないが、契約は切られた。


段ボールに荷物を詰めている手元がぼやけて、黒い点が落ちるのが見えた。

雨のしずくが垂れるのと大して変わらない音を立てた。

それをじっと見守るような温かい気配がして、僕の心はより一層沈んだ。

誰も他に乗る人がいないのを確かめて、エレベーターに乗り込んだ。


一階分エレベーターが下がったところで扉がものすごい勢いで蹴り上げられ、ふてくされた社員が乗り込んできた。

僕を一瞥すると段ボールをジロジロ見てきた。

「お前、やめるのか?こんな会社やめちまえよ。」

そう言うと次の階で降りて行った。


僕は、その社員になりたいと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る