施設
不意に知らない番号からの着信があった。
僕はその番号にかけなおした方がいい予感がして、掛けてみた。
すると高山さんに繋がった。
「久しぶり。元気だった?」
高山さんは以前とは違ってずっと元気そうな声をしていた。僕はあまり元気ではなかった。なので素直に会社であったことを話した。すると彼は言った。
「やっぱり2人で考えたやり方をやった方が良かったね。」
高山さんはそれが当然であるというような言い方をした。何となく違和感と、彼に対する不穏な感情を抱いたが、しかし僕は高山さんに正義があるような印象を受けていた。
「そうだと思う。」
ところで僕と高山さんが葛本に仕掛けようと思った復讐は、きわめて単純なものだった。復讐と呼べるようなものとも言えなかったかもしれない。
元々葛本は細かい不正やプライベートでもあまりよい話を聞いてなかった。
そして僕らが先に仕掛けるようなものであっては良くない。
彼が行動した不正が元で何かが動くのがいいと思った。
というところで考えたのが、パソコンを開こうとすると動画で彼自身の顔が配信されたかのように見せかける、というものだった。
「だってだよ、暗号化してからのデコードといったら、うまくいくとは限らないだろう。」
彼は言った。
「でもデータなんて、メールに添付する挨拶文くらいなものだよ。」
僕は答えた。
「そのカッコのデータのままでどうせ彼の事だから相手先に送り続ける事だろうな。」
高山さんはそう答えた。そしてそれに僕は同調する。
「ところで、これから会えない?僕の今いる施設になかなか感じの良いカフェがあるんだ。」
それから1時間ほどして、僕と高山さんはカフェで待ち合わせた。
天井が高く、外には国立公園が見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。