T氏

僕がすっかり汚い身なりをした彼に会ったのは、それから1月後だった。


偶然降りた駅で一服しようと徘徊している時だった。その駅は変わった構造をしていて、ロータリーがドーナッツ状になり、屋根がついていて道がそこで終わっていた。何のためのロータリーだろうとわからず、このロータリーの抜け方を歩きながら見つけ出そうとしている時、1人のホームレスに出会った。それがあの、会社で奇妙な動きをしていた高山氏だった。目は死んだようになり、一瞬本人だと見分けがつかなかった。それでもすぐわかったのは上手く返せない掌の動きからだった。彼は段ボールを抱えていたのだが、内側に来る方の手に関しては、甲で押さえていた。外側の手で必死で抑えなければならず、段ボールはしょっちゅうずり落ちていた。仕事の間も、書類を渡す時にしょっちゅう落としていた。そのせいか、コピーを頼まれても無視する場面がしばしば見受けられた。

「高山さん!」

僕は声をかけた。僕はとても驚いたのだが、恐らくここで出会えたのは奇跡だった。何より今の自分の気持ちを分かち合える仲間が欲しかった。すると彼は怯えて足早に僕から逃げて行った。

「待ってください!葛原主任、知っていますよね。」

そういうと彼は振り返り、僕を凝視した。


僕は彼とロータリーから少し歩いたところにある、周囲から塀で囲まれている公園に向かった。

そこで缶コーヒーを彼に渡すと、彼はそれをむさぼるようにして飲んだ。


一通り主任の話をすると、高山は空になった缶をじっと見つめ、黙り込んだ。

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