確執
「何でこんなこともできないんだ。」
いつものようにどこかの部署の上司が決まった人間に怒鳴りつけていた。
周囲はクスクス笑う。
彼は入社当時から奇妙で奇抜な行動をとるのであった。
僕はそんな彼と上司の関係を見ているとある関係性を見出した。
最初は彼のおけた態度とは不釣り合いのピシッとしたスーツを着て頑張っていた。そのスーツを見てまず上司はほかの社員と彼を物笑いの種にしようとしたが、上司が後ろを向いている間に彼はある方法で他の社員を爆笑に導くのだった。
そんな彼の行動を上司は気が付いていなかった。
しかしそんな彼は突然出社しなくなってしまった。彼の生意気な態度に、仕事がセーブされたとの噂が流れたが、定かではない。
彼の机はもぬけの殻になっており、ただ一枚、引き出しの中にメッセージが残されていた。
その穴を、僕が埋めることになった。
そして上司も、変わった。その上司は深海魚のような雰囲気を醸し出していた。
どこがというわけではないが、とても静かで、水底から太陽を仰ぎ見ているような、そんな死んだ目とも言えるだが魅力的な目だった。
上司は僕が自己紹介をするとこんなことを言った。
「辞めたやつが住居不定になったらしいな。そこここで噂になっている。」
少し前に見たスパイ映画の俳優に雰囲気が似ていると思った。彼は何故そんなことを僕に言ったのかは不明だった。
上司の仕事の指示の仕方は的確だった。
わからない部分は尋ねると丁寧に教えてくれた。
ある日問題が起きた。
しかしその問題も、透き通るような横顔で、まるで譜面出も追うような目つきで解決していってしまった。
そして僕はその問題が発覚してから、逃げるように会社を辞めた。
ita recedere
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