第2話B中学校①
A中学校を静穏に転校した僕は、翌週にはもう、となり町のB中学校でスクールライフを送っていた。B中学校転入からはや二週間、ここでの生活にはもう馴れた。てか僕の転入するような中学校って公立だからか、クラスの雰囲気以外、例えば、授業内容だとか校舎の造りはほぼ同じ様なものだから、何度か転校、転入を繰り返せば飽きてしまう。慣れすぎると退屈を感じちゃうんで、しばらくは転校するのを抑えようと最近考えている。基本これまでは一ヶ月に一回ペースで転校していたから、これを三ヶ月に一回程度に抑えよう。なんてことを僕は胸中で、学校の机に向かい、筆記用具を片手に持ちながら語らっている。現在、休み時間だというのに僕は、自クラスの教室中、自席でぽつんと勉強するふりに勤しみ中。無論そんな僕に話しかけてくる奴はいない。それじゃあA中学校にいたときと同じ状況じゃないですか、転校した意味あったんですか。と、心の薄汚れた人は感じてるだろうが、ちと違う。語弊が生まれていそうなので説明しよう。僕は、このB中学校で、口数の少ないクール系秀才イケメンキャラを確立していて、今の状況はあくまで自分が望むもの。つまり僕は今回、あえてクラスという組織から孤立しているのだ。これは『自分は働きたいとは思うが、あえて働いていないのだ』とか言っているクソニートのそれとは違う。自分の場合、ちゃんと経験の上で行き着いた結論だからね。
転校初日の朝。僕は担任ぽい教師に、とあるクラスの教室まで案内されるがままついて行った。そして担任ぽい教師の後に続き、その教室に入った。第一印象は『普通のクラス』。まあそれが当たり前だし、そうでなくてはいけない。どことぞのヤンキー漫画みたく半学級崩壊されていても困るしね。まあそもそも、そんなクラス今時あるわけないだろうが。
第一印象『普通のクラス』認定をうけたクラスでの僕への待遇は、ごく平均的。初めの自己紹介もかなりウケてたし、転入当初、僕に話しかけてくる奴等も結構数いた。その奴等の発言に、優しい僕は空笑いで丁寧に対応をし、それなりに頑張ったよ。そんな努力も相成り数日経った頃には、無事クラス内カースト中位グループに所属できたんだが、それはあまりにも退屈で難儀なものだった。
だってあいつらの話、絶望的につまらないんだもの。昨日観たテレビ番組の感想を述べあうだけで時間稼ぎしているような、間を取り繕う内容の薄っぺらい話。そんな会話を興味ありげに聞くふりをしつづけているもんだから精神的にも草臥れる。この国では見えない雰囲気を読む演技をせねばならない。だから僕がメンバーに「お前らの話、えげつないほどつまらんぞ」とは、口がさけても言えない。ただ聞くふりをするしかないのだ。聞くふりをした上で時たまそれっぽい発問を、話している相手に投げかける。面倒臭い。クラスメイトと話してみて切にそう感じた。面倒臭いことは若いうちに経験しておくべきとか、言ってくる人もいるが、そんなことはないだろう。面倒臭いことを面倒臭いことだと感じてる時点で結果は明らかなので、極力経験しない方が良いに決まっている。なるべく避けた方が無難。ってことで、僕は自らぼっちに成り下がることにしたのだ。(一応一週間は頑張ってグループの奴等と接してたと思う。当時の僕の性格を踏まると、結構健闘した方だよな。余程学園青春ドラマに憧れを抱いていたんだなあ。染々そう感じる)
そんなこんなで二週間、現在に秀才キャラを演じている。休み時間にいつも勉強している口数の少ないクールガイ。世人の目にはそう映っていることは間違いない。でも勉強するふりをしているだけで、正しくはかっちょいい詩を書いているんだが、その際何かしらの教科書は開いていたし、周りから自分の手元はみえていないだろうから気付く人はいないと思う。いつもならこんなストレススクールライフ、耐え難く二ヶ月以内に転校するんだが、今回そうしないのには理由がある。学習環境がいいからとかそんな面接でしか使わないもんでは無い。そんなのはつくろうと思えばいくらでも設けられるし、質だって自分次第でいくらでも上げられる。学習環境なんて求めるのではないのだ。自宅から近いから、でもない。確かに僕の今住んでいる所からB中学校までは徒歩十分。かなり近くて良い場所。けどそれが理由でないと断定できる。月百万貰っている僕が、その気になればB中学校の近場に拠点を構えられるし、遠くともタクシーを利用するので、さして登校に苦労はしないから問題にはしていないけど、だからといって立地にこだわっていない訳でもない。成る丈学校から家まで徒歩十五分の所がベスト。程よく周りの景色を楽しめ、程よい運動にもなるからね。なので僕はいつもそこを狙っているのだけど、今回は残念ながらそんな好立地はなかった。故にどちらかといえば今般の引っ越し先は気に食わないのだ。僕が転校しない理由は、そんなちゃっちくはないぞ。僕が転校しない理由。それは、このクラスに僕好みの女の子がいるから……
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