第二輪ー⑤
「どうして入れないのですか?!」
門の入り口で一人の女性が叫んでいた。
「緊急の為です。今日はお引き取り下さい」
一人の管理人が無情に非情にそう言い放つ。
「あの人の傍に行かせてください!」
尚女性も引かない様子だった。
「無理です。今日はお引き取り下さい」
「なんでよぉぉぉぉぉ!」
女性はその場で泣き崩れた。
それを見ても管理人は眉一つ動かさず、自身の仕事に戻った。
門の前で泣き崩れる女性の前に、一人の管理人が近寄る。
「少しいいですか?」
その声の方に、女性は顔をあげた。
涙でぐちゃぐちゃの顔を、女性は手の甲で拭いつつ、
「誰ですか?」
と問うた。
にっこりと誰にも害を与えないような笑顔で、
「ここの管理人の一人です。お話いいですか?」
そう言った。
見ると隣にはもう一人の管理人が立っていた。
女性は目を瞑り、考え込んでから、
「あの人の元に連れて行ってくれるなら」
そう伝えた。
それを聞いて、
「それは無理です」
ともう一人の管理人がきっぱりと放った。
「何故ですか?!」
食い気味に女性が聞くと、
「あなたには嫌疑がかけられています」
栗色の管理人が静かに言った。
「嫌疑……?」
困惑した顔で女性は呟いた。
「芽を食べるんじゃないかという嫌疑です」
背の高い管理人がきっぱりと答えた。それを聞いて女性は、目を見開いた。
「……は?」
顔全体で意味が分からないという言葉を発していた。
その顔を見て、二人の管理人は頷きあい、
「芽を食べるという行為はご存じですか?」
と女性に問うた。
「芽を……。何馬鹿なことを言っているんですか?」
女性は怪訝な表情で管理人達を見た。
「食べれるはずがないじゃないですか。種は埋まった瞬間に強固な守りで守られると私は
女性がそう言うと、
「その通りです。種を種植え(まいそう)した時点で、種は守られ、花が咲くまで触れることは出来ません。それが決まりです」
背の高い管理人が静かに言う。
「何故私にそんなことを聞くのですか?」
「あなたが毎日来ていたからです」
「なるべくお参りに来てくださいと言ったのも、あなたたちですよね?」
女性が食い気味に聞く。
「言いました。ですが普通は3日、いや1週間に1回程度です。あなたは毎日来ていた。まるで芽が出る日を見極めるように」
そう管理人が言うと、
「……あの人にお願いされたんです。芽が出るまで毎日見舞いにきてくれないかと……」
それを聞いて、管理人達は目を見開いた。
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