第二輪ー④


「芽を食べる……?」

「知らないのか?今北区だとそれが流行っているそうだ」

「北区で?あそこは縁が薄い人たちばかりが集うところじゃないのか?」

「さあな、詳しいことは知らないけれど、食べるんだとよ」

「食べてどうするんだよ」

「故人と永遠に繋がっていられるって信じられているらしい」


それを聞いた一人が目を見開いた。


「バカバカしい……」

「しかも食べられた芽は二度と再生しないんだとよ。被害が数十件に上っている」

「それは……深刻だな。花を咲かせないのか」

「ああ、食べなければ毎年故人の花に出逢えるのにな。永遠に居たいだなんておかしい」

「不老不死になるとか、じゃないんだな」

「芽は永遠なんだとさ」

「北区でねえ……。そういうのとは縁遠いところだと思ってた」

「発端は東区の商人の人らしい。なんでも大恋愛だったから片時も離れたくなくて、闇売人に相談したらしい」

「そしたらそう言われたのか」

「考えることがエゲツないぜ」

「今その商人は?」

「牢屋だよ」

「北区の連中は?」

「捕まるのはあっさり捕まるらしい。現行犯だしな。それに相手は永遠に居られるからどこでもいいんだとよ」

「……それで彼女もそれを狙っているってわけか」

「可能性はある」


一人が顎に手を当てて考え込んだ。


「上司には?」

「一応言ってある。でもそこまで気に留めてなさそうだったな」


それを聞いてグレーの男が考える。


「俺たちだけで見張りをするか?」

「それだと他がおろそかになるんだよな」

「上が認めてくれないと……だな」


その場で二人は考え込んでしまった。

その間も女性はずっと種の前で佇んでいた。



その日は来た。

女性が見守る種が芽を出した。

それを一番に発見したのは、小さい栗色の男だった。


「おい!芽が出た」

「とうとうか。上司に言ったのか?」

「全員に通達するらしい。ちなみにその女性は今日から出禁にするとよ」

「やっとかよ」

「芽が出るまでは分からなかったからな」

「どう出るかだな」

「暴れたら捕まえてもいいんだとよ」


それを聞いてグレーの男は眉をしかめた。


「いきなりの急展開だな。それまで気にも留めてなかったのに」

「なんでも北区の奴らが騒いだらしい」

「なんて?」

「全地域にこの騒動は拡大する。その前に全員捕まえるべきだって」

「食べる奴と食べないただ見舞いに来ただけの奴を見分けるのが難しいがな」

「それがな、芽が出て数日間守ると、それ以降は大丈夫なんだとよ」

「は?」

「なんでも出てすぐじゃないと、意味がないらしい。捕まった奴がそう吐いたそうだ」

「鮮度が命ってか?」


バカバカしいという言葉を一人が吐いた。


「数日間守れば、再度見舞いを許可するんだとよ」

「芽が食べられる心配は無くなるからな」

「……固いらしいぞ」

「食べたことないから分からねえよ」

「固くなるんだとよ。芽が出て数日間は柔らかいらしいが、数日後に固くなるんだと。食べれないくらいに」

「どこ情報だよ」

「捕まった奴情報」

「つまり固いのをつかまされた奴がいるんだな」

「そういうことだ」

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