第二輪ー③


「今回も無事盗難を防ぐことが出来た」


上司が部下に対して、毅然と言う。


「尚今回の遺族の方は、3親等以内ではあったが、罪を犯した。今後はチェックリストを作った。そのチェックリストから外れる人は3親等以内であっても入れないものとする。皆目を通しておくように!」

『ハッ!』

「それでは解散」


そう言われ、管理人たちはそれぞれの居場所に戻っていった。

その途中、


「今回は反射神経が良いお前のお手柄だったな」


上司が一人の管理人にそう言う。

言われた小さい栗色の管理人は、


「そう思って俺を配置してたんでしょう?」


にやりと言うと、


「そういうことが起こってほしくないな、と思っての事だ。分かっていたわけじゃない」


上司が苦々しく言う。


「でも、事前に情報は掴んでいたんじゃないですか?チェックリストまでご丁寧に作って。こんな短時間で」

「チェックリストは前々から打診があったんだ。以前にもあった方法などから、割り出してだな」


上司が困惑したように言うと、


「親族であっても犯罪を犯す人がいるなんて、寂しい世の中ですね」


栗色の管理人が、声を落として言う。


「そうだな」


上司もそれに同意した。


「今後もこの調子で警備を頼む」

「ハッ!」


そう言って上司を見送った。


「また来てるね」

「来るのは良いことだろ?」


一人の女性を見ながら、管理人たちが話していた。


「でも、なんていうかな……違和感があるんだよね」


一人の管理人が言う。


「違和感?」

「確かあの人って、5日前に種植えまいそうされた人の婚約者だったよね」

「そうだったっけ?わりぃ、ちょっと分かんない」

「大泣きに泣いて、管理人2人がかりであの場から離れさせたから」

「お前その時居たっけ?」

「後から聞いた」

「そりゃ、よく首をつっこんでいることで」


呆れたようにグレーの長身の男が言う。


「普通さ、大泣きにしてたら塞ぐもんじゃない?」

「さあ、逢いたくて来てるのかもよ」

「でも芽が出る前に?」

「居るところに来たいっていうんじゃねえの?」

「俺だったら、花が咲いてから来るかな」

「お前はそうかもしれないけどさ……何が言いたいの?」

「狙っているんじゃないかって」

「種を?」


一人がそう言って、顎に手を当てた。


「それは不可能だ。植えた種は掘り返せない。ふわふわに見える土だが、どういう理屈か種が植わると、種を包み込むように固くなる。それはお前も知っているし、親族たちにも伝えてある。その場に居たのなら、あの女性も聞いているはずだ」

「種を狙っているんじゃなくて、芽をだよ」

「は?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る