第二輪ー②


「それでは種を植えてください」


司祭がそう言い、親族の一人が種を植えようと腰を屈めた。

その間管理人達は警戒していた。

いつ何時敵が襲ってくるか分からないから。

その時は来た。

遺族の一人が土を被せようとした時だった。

そっと袖に隠していた種もどきと交換しようとした。

その行為に目ざとく気が付いた管理人が、遺族の種をすり替えようとした人物の手首を掴む。


「なにするんですか?!」


犯人は声をあげた。


「その種を交換して、どうするつもりなんですか?」


気が付いた時には、犯人の周りには5人の管理人が取り囲んでいた。


「なっ……交換なんて、私は土を被せようと……」

「これは?」


すり替えようとした種を一人の管理人がつまんで目の前に晒した。


「知りません……よ……」


苦しい言い訳をして逃れようとする犯人に対して、他の遺族が声を上げる。


「あんた、おじさんに申し訳なくないのかい?」

「どうせ借金の返済にあてるつもりだったんだろう?」

「あんたが出席するなんておかしかったんだよ」


声を聞いて狼狽える犯人に対して、


「詳しくは別所で話を聞きますので、こちらへ」


管理人の一人がそう言い、犯人は項垂れて連れられて行った。

その時、柱の陰で動く人物が居たのを、管理人は見逃さなかった。


「やっぱ来ると思ってたわ!その場で取引するつもりだったんだな!」


走り去る人物の後を追いながら、管理人は笑いながらそう言った。

そんな管理人の言葉にも動じずに、走り去る人物は、軽々と塀を乗り越えようとした時だった。


「残念でしたー」


塀に手をかけた時に、電流が走った。


「っつ!?」


塀から手を放して、止まる。

その隙を見逃さずに、追いかけていた管理人たちが取り囲んだ。


「俺らじゃないとそこ通れないのよ?行きはよいよい帰りは怖いってね♪」

「くそっ」


電流が走ったことで、手がしびれたのか、手を庇いながら泥棒は言う。


「外で取引するにも、種を持ってたらセンサー鳴っちゃうしね。だから強引にでもその場で交換して逃げる算段だったわけね」


泥棒の腕を締め上げながら、一人の管理人がニヤニヤと言いあげる。


「くだらないことを言うのは後だ。まだ種まきは終わっていない。こいつをとっとと牢屋に連れて行くぞ」


別の管理人が、冷たく言い放った。


「え~?もっとお喋りしたいのになあ~。電流の感じはどうなのとか。俺たち分からないし笑」


ニヤニヤ顔を崩さずに、泥棒を牢屋へと連れていく管理人を見ながら、


「悪趣味だ」

「全く」


別の同僚たちはそう呟いた。

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