第一輪ー⑨



彼らは種を持ち出していた職員の後を、ヒッソリとつけた。

また言い逃れをされない為に、中継も忘れずに。

「どこに行くんだろう?」

「分からない。ついていくしか。」

そんなことをぼやいていたら、イヤホンから中継先の上司が、

「黙っておけ!ボソボソ話していたら、相手に気づかれてしまうぞ!」

と叱責をした。

その上司の忠告通り、その後二人は無言でコソコソとつけていたら、

目の前の職員はある場所で立ち止まった。

「どうしたんだ?」

と二人も慌てて立ち止まる。

見ると職員は、月の光が当たる花壇の縁の上に種を置いていた。

それを見てイヤホンから、

「……そう言えば、ある噂では、花の種は粉状にする前に、月の光に10日かそれぐらい当てないと効果が無いとか言われているらしい。」

と上司の声がした。

それを聞いて一人が、

じゃないですか……」

と肩をガックリと落として、口の片側の端をピクピクとさせながら、ゲンナリした表情で言う。

「まあ、そういうな。おまじないもあまり。それによって効力が高まるという噂が立つのもなかなか信憑性がある。」

「まあ、今回はバカだったから助かったってところですかね?」

と職員を取り押さえようと一人が立ち上がった時、

「待て!」

と上司の声が大きく耳の中を駆け巡った。

あまりの大きさに、二人が耳を手で押さえて、暫く悶絶した。

「ちょ……、あんまり大きな音を出さないで下さい……よ。」

と一人が伝えると、

「ああ、すまん。しかし、今はまだ待て。」

と冷静な上司の声が届いた。今度は適正な音量で。

「その理由は何ですか?」

と別の一人が聞くと、

「もうちょっとだ。もうちょっとで……着く。」

と上司の声がしたかと思ったら、突如種を持ち出した職員の目の前から、人間が空から降ってきた。

それと同時で、

「お前ら二人とも、反対側の道ふさげ!」

と上司の命令が響いた。

それに従って二人が出ていくと、突如現れた人間から逃げるように方向転換した職員が二人の元にやってくるところだった。

「タイミング良いねえ~♪」

「あやうくあなたのせいで、罪を被せられるところでしたよ!」

と二人が言うと、職員はそんな二人にも驚いて足を止めた。

そこを空から来た人が、ガバリと逃がさないとばかりに取り押さえた。

すかさず二人もその援護とばかりに、上に覆い被ろうとした。

「それよりも種を回収しろ!」

という上司の声が聞こえ、一人が花壇の縁に置かれた種を回収した。

「花の種、無事に確保しました。」

「こっちも犯人確保!」

と同時に声があがった。

それを受けて、

「よくやった。」

と上司は短く伝えた。



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