第一輪ー⑧
一人の管理人が、聞く。
「水を与えた後の種って、あんまり盗まれにくいよね?」
「ああ。効果が薄れるとか、根が生えていたりしたら意味が無いとか言われているらしいな。それもデタラメだけど。」
と別の管理人が答えた。
「じゃあさ、今回の犯人は、どの時点で種をすり替えたと思う?」
「種を植える前だと……、種回収時の箱に入れる時と
「それは不可能だよ。保管庫のデータはどう頑張っても書き換えすることが出来ないようになっている、でしょ?それに、保管庫に入れる前に照合の時に、本物の花の種だって証明がされている。」
「もしもさ……その花の種が『別人』だったらどうする?」
と一人が神妙な顔で聞いた。
「別人かあ……。確かに本物の花の種という点においては、間違いがないな。反応するな。」
「あの照合の機械は、まだまだ未完成品だって、聞いたからさ。」
「だとしたら、別人の種をどこで手に入れたか、ってことと、なぜそれを再度ニセモノとすり替えたかってことにならないか?」
「偽物とすり替えたのは、やっぱり本物の花の種ならば、貴重な物だから、どちらも必要なんじゃないの?」
「それはそうなんだけれど……、じゃあ本物を偽物とすり替えまでした理由が知りたい。」
「もしも、そうならば、ってことだよなあ。……、なんでだろう?」
と一人が首を捻った。
「俺たちだけで話していても、ラチが明かねえって。ちゃんと合同会議の時に発言しようぜ。」
と一人が勢い込んで言うと、
「でも、回収した俺たちが、すり替えたって疑われてもいるだろう?」
ともう一人が悲しそうに言う。
「いや、俺たちはしていないんだから、堂々としていればいいんだよ!」
「それもそうなんだけれど……」
と自信なく一人は項垂れた。
そんな相方を励まそうと、背中をバシン!と叩く。
その力の大きさに叩かれた方は勢い余って、身体をよろけさせた。
「おい!危ないだろう!いくら何でも。」
と怒ろうとした時だった。
彼の目はある物を捉えた。
それに驚いて、次は口を開けて固まった。
そんな様子の相方に、初めは軽く謝っていたもう一人が、
「わりいわりい……ってどうしたんだよ?」
と彼が見つめている方向に体を向けた。
そこで彼も見てしまった。
種を持ち出している職員を。
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