第一輪ー⑦



「誰かがすり替えたんだ!」

と種の回収に当たった一人が言った。

「でも、種を花園の外に出すには、センサーが反応するから、不可能だ。」

と回収したもう一人が言う。

「いや、センサーの抜け道や、以前ある物質に包むとセンサーが反応しないことが分かった。もしくは、まだこの花園内に持っているか。」

と上司が苦々しく言う。

「すでに粉状にして持ち出してしまっているかもしれません!」

と一人が言うと、

「粉状にするには、専用の機械が必要だ。それをここに入れることは不可能だ。」

と上司が反論した。

「じゃあ一体誰が?」

と遺族の男性が困惑した顔を向ける。

それにその場に居た職員は、誰一人答えることが出来なかった。



「この度は誠に申し訳ございません。」

と何度も何度も上司は遺族の男性に頭を下げた。

「全力で迅速に捜査をしてまいりますので。」

と言ったところで、

「……、頭を上げて下さい。」

と男性が、申し訳なさそうなトーンで伝えた。

その言葉に従って、上司は頭を上げた。

「起こってしまったことは覆りませんから。……それよりも、種が盗まれてから、もしかしたら14日間経っているのですよね?すでに無いのではないでしょうか?」

と男性が言うと、

「もしも、植えた後掘り起こされたのならば、花園から出す際に、絶対にセンサーに引っかかります。今のところ、センサーの記録を辿っていますが、警報が鳴った報告はありません。」

と上司が告げた。

「警報を一時解除したとか、そういうことは無いのですか?」

「警報を解除する時というのは、存在しません。また、センサーは種だけに反応しますので。」

「では、回収直後に花園に入る際の管理人さんたちはどうなるんですか?」

と男性が聞くと、

「その部分については、トップシークレットです。ですが、その点も不審な点はありませんでした。」

そう上司が伝えて、男性はうなった。

「じゃあ、盗んで花園の外に出すのは不可能だから、まだこの中じゃないんですか?」

と男性が言うと、

「そうかもしれません。」

と上司は苦々し気に伝えた。

「私に出来ることは何かありますか?」

と男性が聞くと、

「ご自宅で待機しておいてください。」

と上司は再度頭を下げた。





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