第一輪ー①
まだ朝焼けの、空が明るくなる前。
うっすらと太陽の光が上りつつある頃。
辺りを眩しい光が、照らし出す一歩手前の時間。
電話のベルがけたたましく鳴った。
<はいはーい!こちら、南3区花園です。>
若人が電話に出た。
二言三言話して、
<かしこまりました。それでは今すぐお宅に向かいますので。
そのままで居て下さいね。>
そう言って電話を切ったかと思ったら、目の前の機械を操作して、
<じゃあ、今すぐ速攻で、奴らに盗られないように向かってねー♪>
と陽気な声で別の人に要件を伝えた。
その頃あるお宅では、一人の人間が亡くなった。
「管理人さんには電話したかい?」
父親らしき人がそう聞くと、
「ええ。すぐに行きますから、そのままでって。」
と年若い娘さんが答えた。
ベッドの傍では母親らしき人が座っていた。
「良かった、苦しまずに逝けたみたいで。」
と母親と思しき女性がポツリと零した。
それに他の家族も静かに同意した。
そんな時、チャイムが鳴る音がした。
「きっと管理人さんだわ。開けてくるわね。」
と娘さんが急いで玄関に向かっていった。
その数分後、部屋に娘さんが、黒いシルクハットと黒いマントを纏い黒いブーツを履いた人物を2人連れてきた。
「この度はご愁傷様でした。」
と全身黒装束の人物たちは、帽子を取って頭を下げた。
それに遺族は、頭を下げ返す。
黒装束の一人が、すぐさまマントの内側から薄い透明の板を取りだして、照合を始めた。
「南区……サバラン方面……さん。はい、間違いないようです。」
と情報を読み上げる。
するともう一人の黒装束の一人が、マントの内側から小さな箱と白い布を取り出した。
清潔なシルク製であることが、一目で分かる代物だった。
「では、失礼します。」
と言って、その一人は故人が眠っていたベッドの上に無防備に置いてあった一つの種を、白い布で丁寧に取り出し、包み、箱の中にこれまた丁寧に閉まってマントの内側に収めた。
書類を持っていた一人が遺族に、
「それではこちら、お控えです。これを役所に提出してください。また、2日以内に<
日時は3時間以内にもう一度電話してください。」
そう言って、二人はもう一度遺族に向かって一礼をして帰って行った。
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