第一輪ー②



その頃花園では、職員がバタバタしていた。

「今日から2日間は、要警戒だ!おめえら気を抜くんじゃねえぞ!」

と上司の怒号が館に響き渡っていた。

それを聞いて職員たち管理人は、掛け声をあげた。

「<いつも>の間違いだよなあ?気なんかここでは抜けねえよ。」

と少し幼さが抜けきらない青年がぼやく。

「そう言うなよ。特に<種>が出来た日2日間は、<あいつら>が狙ってくるんだから。」

と同僚らしき優しい瞳の青年が苦笑を零しながら、そう相槌を打つ。

「とは言っても、この2日間だけじゃねえじゃんか。種を植えてからも大変だしよー。常に警戒態勢だっつーの。」

と青年がぼやいていると、

「そこの新人!ブツクサ言っていないで、持ち場につけえ!」

と上司が一喝した。



種を回収した2人組は、街の中を飛んで走っていた。

「すぐさま金庫に入れないと!」

と種を持っている一人が言う。

「おい、もっとスピード出せないのかよ?」

ともう一人に向かって言うと、

「これが精一杯だって!お前が速すぎるんだよ!」

ともう一人は少しだけ息を切らしながら、それでも必死に走っていた。

「そうは言っても、いつ何時あいつらが……」

と一人がぼやいた時だった。

「おい!種を渡して貰おうか!」

と一人の人物が二人の前に立ちはだかった。

その一人の上を、二人は軽々と飛んでかわした。

一度も驚くことなく、一度も立ち止まることなく。

「今日は正攻法みたいだな。」

と一人が呟くと、

「でも、仲間がいきなり一斉に襲ってきたりしないかな?」

ともう一人が警戒の声をあげた。


上を飛び越えられて、一瞬にして自分の見せ場をつぶされた一人が、

ワナワナと怒りで顔を真っ赤にしながら、震えていた。

「おい!あいつらを止めろ!」

と彼が大声を出すと、

隠れていた5人の大男たちが、次々と黒装束の人間たちに襲い掛かっていった。


それを管理人と呼ばれる二人組は、軽々と交わしていった。

時にはしゃがんでみたり。

時には横にステップしてみたり。

時には後ろに体の重心をずらして、相手のバランスを崩してみたり。


そうこうしている内に、二人組は襲ってきた連中を撒いて、見えないくらい遠くまで去って行った。

その後姿を見ながら、初めに軽々と交わされた一人が、

「どうしてもあの種が必要なのにー!」

と大声をあげた。

すると、チラホラと近くから、

「朝っぱらからうるせえ!」

と威勢のいいおっちゃんの怒声が聞こえたり、

「今何時だと思っているの?!」

とおばさんのキンキン声が鳴り響いた。


こうして、街の<今日>という1日がはじまり始めた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る