非日常
あの桜並木の一件の後から彼女はよく僕のいる教室に顔を出すようになっていた、なぜなのか一度聞いたが逆になぜなのか当ててみろだのとはぐらかされてしまったせいで、未だよく分かっていない。
そんな非日常が一週間
やはり彼女は最初の印象のまま、学校でも、人気のある人物だったらしくクラスメイトからはなぜ彼女と親しいのか、付き合っているのかなど色々と聞かれ噂も囁かれたが僕にも分からないから彼女に聞いてくれと返すと彼女本人が
「友達に会いに行くのくらい普通でしょ?」
と言ったので事は大きくならずに済んだ、そこらへんの配慮はしてくれるらしい。
だが、一部の人間例えば彼女に好意を持つ者にとっては納得のいく話ではなかったらしくまた、そのものがクラスにも何人かいたことから丸く収まったとは言い切れない事だったが何かしてくる訳でもなかった。
ただ僕が彼女に呼び出され渋々読んでいた本を閉じ教室のドアへ向かう時の冷ややかで棘のある視線を除いて。
もっとも、彼女はそんな事気にも止めていない様子だったが。
だが、僕にとってはそんなことよりも大変なことがあったそれはこの一週間彼女に振り回され続けたことだ、内心冷ややかな目の方がまだ幾分かマシだと思えるほどにはキツかった。
いや、普通の高校生ならそんな大したことではなく日常なのかもしれないが、そんなアクティブな日常を過ごしていない僕からすれば十分すぎるほど非日常的な日々だった。
まず桜並木の一件の次の日、彼女に半ば無理やり食堂で知らない人たちと昼食を共にさせられた、
その次の日は放課後の花壇の手入れを手伝わされ、
またその次の日は、勉強を教えて欲しいだのと口実をつけ言ってショッピングモールで、買い物付き合わされ、
またまたその次の日は、何もしてこなかった男子生徒に呼び出され根掘り葉掘り彼女について延々1時間程度聞かれ
傘を貸し、一緒にたわいもない話をした日もあったか
とこんな毎日が一週間。
何度も言ってくどいと思われるかもしれないが僕は表に出て行く方ではないからこんな毎日、一週間だなんて非日常的で大変な日々だった。
そんなある日、彼女は屋上で花壇に水をやっていた時、ふと思い出したように僕に切り出した
「ねぇ、神馬君はさ、私のことすき?それとも嫌い?」
一瞬、質問の意図を理解するのに思考が停止してしまったが、明るくなんでもできお喋りな彼女のことだいずれそんなことも聞いてくるのではないかと思っていた、先日僕に友人の恋愛話をいともあっさりと話していたように
だから、ゆっくりとでも、きちんと届くよう言った
「人柄や性格は好きだよ、君の周りにいる人はみんないつも笑顔で幸せそうだから、でも、恋愛的に好きかどうかとか、聞かれたらよく分からないが嫌いではないのは確かだ」
と、
ぽた。
ぽた。
その音は、水やりの水の音だと思った、いや、思っていた。
彼女の髪で隠れた顔から溢れでた涙の音だとはその時全く気づいていなかった。
この時、僕が違う選択をして違う言葉を発していたら結末は違っていたのかもしれない。でも、そんな事はその時の僕には分かりもしない事だった。
ただ、時と同じように春を告げる暖かな風が2人の間を静かに流れていった。
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