「君の笑顔と僕の鼓動」
夢の綴りビト
桜の木の下で
高校二年生になったばかりの春
僕は彼女に出会った。
いつもの変わらない通学路
ひとりで歩く帰り道、もう部活動は始まっている
時間だから人はまばらだ。
僕は、いつものようにポケットからスマホを取り出し、イヤホンを耳につけ、お気に入りの曲を聞くため、慣れた手つきでリストの再生ボタンを押した。最近買ったCDに入っていた穏やかな洋楽、何気ない日常のはずだった。
それは突然だった、彼女はその小さな手で僕の大きな手を引っ張って行った。
タッタッタッタっ
ハァ ハァ ハァ ハァ
彼女の手は僕より力強くて少し暖かい
彼女が全速力で走るからいつもより景色が早く過ぎていった一つだけ曲がる曲がり角を無視して
何が何だか分からなくなるほどに走った
だが一つだけ分かったこと、それは運動が好きそうで、思いっきり走っているのにペースの落ちない彼女に対して、男の、ましてや運動部にも入っていない僕にはこのハイペースは地獄だったこと。
それから、走って走って
どこまで来ただろうか
ハァハァ
僕は息も切れ気味にやっと止まったと思い顔を上げた、
すると、そこには僕達の頭上をピンク色1色に染めつくす桜の空があった。
(綺麗だ。)
唐突に、ただその一言だけが浮かんだ。
それほどに美しかった。桜は川沿いに沿って満開に咲きみだれ、地平線に体をうずめた夕日がそのピンクを一層綺麗にしていた。
まるで、1日の最後を告げる夕日の暖かな光を花びら一枚一枚が纏い化粧をしているように見えた。
だからだろうか、春と言ってもまだ肌寒い季節なはずなのに僕達のいる場所だけは柔らかな温もりを感じた。
すると、そこで初めて彼女が喋った。
彼女も案外疲れているらしく、少し息が上がっているけれど僕ほどではないか笑。
「私、綾芽 唯(あやめ ゆい)と言います。
突然すみませんでした、貴方にこの桜一番に見せたくてそれで、こんなことして。」
彼女は、僕より少し小柄で、でも一生懸命になんで僕がこんなことになったのかを話してくれた。
「そう、だったんだ、いや、大丈夫だけどなんで僕なんだ?うちの制服来てるし腕章の色も一緒だから同じ学年なのは分かるんだけど他のクラスの人とか良く知らなくて。ごめんね」
僕はあまり他人に興味を持つ方ではなかったし、自分から他人の輪の中に入ることはなかった、だからと言って親友や、友達がいないわけではないが、だとしても、彼女との接点がまるで思いつかなかった
だから僕はまず相手を知ろうと思い質問したのだが、僕がそういった矢先、彼女の顔がみるみる青ざめいく。
「あ、あぇ?あの、私のこと知らないんですか?」
彼女は恐る恐る、こちらを伺うように尋ねてきたので、知らないから聞いているんだ。という顔をすればまた今度は驚きを含んだ顔に変化した。
彼女は初対面の僕でさえ気付くほど分かりやすい性格だと思った、表情も豊かで喋りもいい人から好かれるタイプの人間だ、つまりは僕と正反対。
「じ、じゃあ、改めて。初めまして?ではないんですけど笑、隣のクラスの綾芽 唯(あやめ ゆい)と言います。あなたの事は去年の図書委員会の仕事で何度かご一緒させてもらったんですけど。やっぱりおぼえてないですか?」
去年の図書委員会?
……あ、!
「思い出した!、え、でも、君あの時メガネだったよね?」
「あ、はい、進級してコンタクトに変えたんです、分かりずらかったですよね笑」
「いや、今分かった、すぐ分からなくてごめん」
そう、彼女とは去年、僕が所属していた図書委員会の仕事で何度か一緒に活動したのだった。もともと本が好きだったのもあるが、高校生にもなったのだから1回位は何かの役職に就いておこうと思って入ったのが図書委員会だった。それとなくやっていたので、仕事で一緒になった他クラスの人など気にも留めていなかったがこんなところで会うなんて思ってもみなかった。
これが
僕、神馬 優真(じんば ゆうま) と
彼女、綾芽 唯(あやめ ゆい)の
最初の出会い
その日の彼女の太陽のような笑顔は今でも忘れられないくらい、焼きついてる。
バックの夕日と桜がより彼女の笑顔を引き立てていた。
あの日以来彼女はしばしば僕のクラスに来るようになった。
初めは覗くようにドアにへばりついていたが逆に周りの視線が恥ずかしくなったのか僕を呼び出すようになった。
「す、すみません呼んだりして……」
彼女は僕を呼び出すといつも申し訳なさそうな顔で謝る。
「別に大丈夫だよ笑、僕の方こそごめん、気づいたら行くように気おつけるよ。」
「そ、そ、そそのようなことあ、ありません私は何もして頂かなくてもぜんっぜん大丈夫なのでッ!!」
ここで、なぜ彼女がこんな話し方なのかというと癖なのらしいが
僕と彼女は同級生なので少し、いや、かなり違和感がある
「綾芽さん、この前から言ってるけど、そんな他人行儀な喋り方じゃなくても僕達同級生なんだしもう少し崩しても、いいと、思う、、よ?」
と、僕が言っている間に何故かまた彼女の顔がどんどん驚きに満ちて
「な、なな!なんでですか!と、友達と言ってもまだあまり互いのことを知らない内に、タ、タメ口など!」
んー、なんか彼女の中では
崩す=タメ口
らしい
「そ、そう、じ、じゃあそのままで(^^;;」
「はい!笑」
ドキッやっぱり彼女は笑うと凄く可愛い、でもなぜか言葉遣いと仕草がマッチしない笑
笑顔だけならこの学校の大体の男を振り向かせるだろうけど笑
こんな感じで僕達は「友達」と言うものを続けていた
普通の人から見たらこれは友達なのだろうかと思われそうな関係で笑笑
また次の日、そのまた次の日も彼女は僕のクラスに来た。
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