僕の鼓動

彼女は、本当に毎日、毎日飽きもせず見舞いに来た。


だが、僕は何一つ変わらない様子で無表情のまま時を過ごす。

それの繰り返し、彼女は1人でに学校の事や今日あった嬉しかったこと嫌だったことを話しては僕の方をチラチラと伺ってきた。


だが、何も返さない。

彼女も、分かっているという風にまた、笑顔になって話を続けた。









そんなある日だった、また、彼女が来なかった、やっと、一人になれると思った。心配?そんな感情は忘れてしまった。

でも、そこに慌てた様子の看護婦さんが駆け込んできて、放った言葉を、理解するまで少しかかった。ようやく理解した頃、僕は小さな子供のように泣いて喜んだ。


看護婦の方は、

「神馬くん!貴方の心臓のドナー!!見つかったわよ!本当に良かった!」

と、自分の事のように喜びながら言ったのだった。



心臓のドナー提供者にあってお礼したいと言ったが、それは規則で固く禁じられているらしく相手の名前も何も知らされないのだとか。だから、僕は祈る様に感謝を伝えた。


心臓の移植手術はそれから、2週間後に行われることになった。




そして、約束の2週間後…。


およそ、6時間にものぼる手術の末、無事に成功。


数日後、目を覚ました僕の傍には、わざわざ遠くから来てくれた祖父母が嬉しそうにその皺でクシャクシャになった顔で笑いかけてくれていた。


(僕は、生きてる、生きてるんだ。)


ホットするとまた、涙がこみ上げてきて、何度目かの号泣をした。


その後も、僕は順調に回復していき、日常生活が遅れるまでに回復したので、退院を許可してもらった。

久しぶりの外、いつも通っていた通学路が懐かしく感じる。学校は来週から行くことにした。祖父母は無理しないようにと、言ったが、僕が、行きたいと言ったので快く了承してくれて、先日、実家へ帰っていった。


僕は何となく川沿いの道を散歩してみた。普段とは違う時間帯の道路は車もまばらでゆっくりとした時間が流れていて、心地よかった。


すると、ふとそこで、一本の木に目が止まった。今の季節は夏も去り秋に近い、川沿いの木々はもう紅葉の季節とばかりに黄色や茶色、橙色の葉を散らしながら風情を出している。のに、その木だけはなぜか、似つかわしくないピンク色をしていた。気になって近づくと、やはりそれは桜で、満開に咲き誇っている。


ドクンッ


ドクンッ


なんだか急に心臓がドクンドクンと脈打ってなにかを訴えてきて。


フューー!!!!


強い突風が吹き、桜がヒラヒラと宙を舞う。


一瞬、見間違えかと思った。なぜか、それは、桜の舞う中、彼女、綾芽 唯が姿を表してから。


彼女は何日も見舞い来ないままだったので、ドナーの事も手術の事も言えずじまいだった、


「あ、綾芽さん?綾芽さんなの?」


僕の質問に彼女は、いつもの笑顔で


「そうですよ!綾芽唯ですよ笑笑、それより!退院したんですね!おめでとうございます!難病って聞いてたからもう助からないのかと思ってましたよ笑」


「勝手に僕を殺さないでよ笑笑」


他愛も無い話、だからこそ凄く嬉しかった。また、元に戻ってこれた喜び、彼女にまた会えた喜び。たくさんの喜びで、僕はまた泣いた。


「え、え、えぇー!!ちょっと急に泣かないでくださいよ、なんだか、私が泣かしたみたいじゃないですか!」


「泣)そ、それもそうだね、ハハハ、でも

本当に良かった、君にまた会えて!」


「私もです!で、こんな時になんなんですけど、実は私がここに居るのは訳があって、貴方に伝えたいことがあって来たんです。」


彼女は真剣な眼差しで、でも少しモジモジと照れる様子でそう言った。何となく言いたいことは分かっていたけれど邪魔せず素直に「なに?」とだけ言った。


「あ、あの、私、、、、。

貴方の事が、、、好き、みたいです。」


ほら、やっぱり思ってたとおりだ。だから、僕の答えはもうきまってる


「僕も、、、、君のこと好きだよ!」


久しぶりに心の底から笑えた気がした。

2人とも満面の笑みで何故だか握手して

その後、桜の木の下のベンチで二人並んでいっぱいおしゃべりした。とても、楽しくて楽しくて幸せって思えた。神様は病魔の代わりに僕に幸せをくれたんだと思った。


彼女には、母さんのことも、父さんのことも話して、自分の事をたくさんの教えた。すると、彼女も、たくさんの教えてくれて、弱気で、勉強が苦手、好きなものはアップルパイ、嫌いなものはピクルス、実は2人の弟持ちなお姉さんだったりと、たくさんの彼女を知ることが出来た。


話すのに夢中で、気づくともう辺りは暗くなっていて、夜遅くなっていた。僕は彼女に「家まで送るよ」と言ったが「近くだから良いよ」と断られてしまい、強く出れず結局僕は一人帰った。帰り際に


「また、来週、今度は学校で会おう!もっといっぱい話そう!」


と言うと、彼女は夜の空気を暖かく照らす太陽のような笑顔で見送ってくれた。


こうして、僕ら2人は両思いの恋人になった

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