君の笑顔
ふと、過去のことを考えて外を見ていると。
突然、病室の扉が開いた、
ガラガラガラ
そこから、規則正しい靴の音が近づいてくる
コッ コッ コッ
僕は目の前その人物を見て驚いた
その人物は、何日か前、僕を避けていた彼女、綾芽 唯だった。
彼女が何故ここに来たのかは分からないし、知りたいとも思わない。
ましてや、今の自分には、彼女と並んで笑うことも、いつものように話す事すら出来ないほどに感情が無いのだ。
だから、ただ僕はじっと、彼女を見ていた。
どこを見るとでもなく、焦点の合っていない視線で
そこから少しの沈黙
二人の間にある互いを探り合うような静けさを崩そうとしているのか
外の自然や、人工の音がやけにうるさく聞こえる。
その沈黙を破ったのは彼女だった
彼女はこの場の空気に気を使ったのか、とても優しい声色で話し始めたので聞き始めは彼女だということに気づかなかった。
「聞きました、病気の事、貴方のこと」
僕は何も返さない
「こんな時に話す事なのかどうか迷いました。でも、今言っておきたいんで、話しますね。何故、私があなたを避け休んでいたのかを」
彼女の真剣な表情
(こんな顔もするんだなぁ)
僕は唐突にそう思ったが結局興味はこれっぽっちも沸かなかった。
彼女が休んでいたことなんて知ったところで何も変わらない。
「私、あの日、事故に遭いそうになった子供を助けたの、それでちょっと頭を打っちゃって、大丈夫って言ったんだけど、車に乗ってたおじさんがどうしてもっていうから病院で診てもらってたの」
彼女は僕が興味がないことをわかっていても続けた
「それでね、全然異常は無かったから!大丈夫です。ご心配かけました」
そう言うと彼女はベッドの側に寄ってきてそっと手を出して
「だからもう一度貴方とお友達、やり直しに来ました!」
と言った
そこで僕は初めて...そう、余命宣告をされてから初めて言葉を発した
「なんで今それを言うの?僕の状況分かってるよね?もう、、、、」
「無理だよ。、、、帰ってくれ」
冷たいと言われるかもしれない。
ひどいと言われるかもしれない。
でも、僕はもう放っておいて欲しかった、生きることを諦めてしまい
心臓移植のドナーも見つからず毎日をただ孤独に過ごす、そんな日々でよかったんだ。
だってそうだろ、もし彼女がずっと傍にいれば彼女は僕が衰弱して死んでいく姿をいつかは見ることになるかもしれない、そしたらまた僕が母さんを無くした時と同じ思いをしてしまうかもしれない。
そんな思いは極力して欲しくないから1番互いが悲しまない方法で断れたと思った。
でも、やっぱり彼女は違った
「なんでですか?!そりゃあ貴方の気持ちは私には分からないです。それでも、いや、だからこそ貴方と一緒に、貴方の傍に居たいんです!」
意外だった。僕の病室に入ってきたときはそんな事を言うような雰囲気ではなかったから
「そこまで言っても僕は無理だ。僕だって傍に誰かがいてくれるのは嬉しい、でも、僕が死ぬ事で君を悲しませたくないんだ、ごめん」
だから僕は本心をぶつけた
彼女には笑ってて欲しかったから
こんな僕のために彼女の太陽のような笑顔を絶やしたくなかったから
「だったら貴方がそう思ってなくてもいいです!毎日御見舞来ますから!」
彼女は少し怒ったようにそう言い捨てて病室をあとにした
僕には彼女が病室を出る時泣いているように見えた。
僕にはどうすればいいのか分からなかった。
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