第6話 師匠
この街に来て今日で14日目。
一昨日は一層で一泊、昨日は宿に泊まった。
やはり探索中と違ってベッドの方が疲れが取れる。
宿の受付で金貨10枚ほど引き出しておく。
もちろん買い出しに出かけるためだ。
朝からさっそく武器屋に寄って武器を購入することにした。
チェルノソードでもいいが、変身させて練習に付き合わせるのも気の毒だからだ。
ついでに盾も購入しようと思う。二層の形状だと必要になると思ったからだ。
「やっぱ
『空気を切る感じがわかりやすいかもね』
「切る感じなら
金貨1枚はお買い得なんでは?……買うか。
また両親に感謝しながらブロードソードを購入した。
あと盾も買っとこう。
普通なら軽いバックラーだろう。
だが俺にはチェルノのおかげで装備の重量制限がないのだ。
というわけで店の人に色々聞いてみた。
大きな盾は基本遠距離を防ぐためのもので接近だと意味ないらしい。
しかも軽量化のために金属がほとんど使われていなかった。
血迷って中型で一番重いやつを出してもらった。
元は観賞用の盾で死ぬほど重かった……金貨2枚でいい? 気に入った!
重い盾は店を出て即、チェルノに取り込ませた。
気が向いたときに練習に付き合ってもらおう。
続いて魔道書を買いに専門店に寄る。
どのレベルまで覚えれるのか気になった。
適当に四冊ほど購入した。
Lv1土属性の魔道書『
踏み込んだ脚から地裂を起こす魔法。
敵の姿勢を崩す魔法らしい。接近戦用に覚えたい。
Lv2雷の魔道書『
詠唱者の触れた者に電撃を与える魔法。
盾で防いだら使う癖を付けれたらいいなと思った。
覚えれるかはまた別の話。
Lv2聖の魔道書『
一時的に武器に祝福を付与する魔法。
これはチェルノに効果があるのか気になった。
Lv3聖の魔道書『
詠唱者の傷を癒す魔法。
一冊だけ三段階の魔術書を買った。
使えたらいいなぐらいでいい。
全部で銀貨8枚だ。
Lv4まではメチャクチャ安かった。
どうせ街の近くで行動するわけだし、こんなものいいか。
とりあえずいつもの場所に移動することにした。
一月はかからないはずだ。
俺だって成長してるってとこを見せる時だと思う。
程なくして二人の出会いの地に到着した。
チェルノに俺が最初に覚えた魔術書と、さっき買った本を全て渡した。
『どれからいこうかなあ』
「随分楽しそうだな」
『大魔導士チェルノになっちゃう』
「いってろ」
まあ楽しそうで何よりだ。
俺の方も始めよう。ああ、また腕が上がらなくなると思うと憂鬱だ。
まずは素振りから始める。三日ぐらい振りまくってやる。
——
鞘ごとブロードソードを振り始めて今日で三日目だ。
ああ、腕痛い。筋肉痛だ。
最初は軽く振りながら痛みを流そう。
チェルノは『
三段階の魔法だぞそれ……アホだ。
大分と素振りにも慣れてきた気がする。
昨日は筋肉痛で半分以上魔道書読んでたが。
おかげで『
今日までしっかり素振りする予定なのだが……やりにくい。
空気がいつもと違うのだ。
少し離れた切り株の上にじいさんが座ってた。
身なりは良さそうだ。白い髪とひげが、かなりの年期を感じさせてる。
開いた足の間に、両手をかぶせて杖をついていた。
俺の下手くそな素振りを見ながら、にこやかに微笑んでいた。
優しそうなじいさんだ。俺の祖父を思い出す。
……などと考えていた時もあったな。そういや。
——
いつもの修行の場にはいつもの二人とおじいさん。
いつもと違う張り詰めた空気には、怒号とも言える檄が飛び交っていた。
「一振りごとの繋がりも考えて剣を振うるんだ。一連の動作を流れるように体のすべてに伝えろ。
腕だけで振るうんじゃない! 踏み込んだ力を剣に伝えろ。何度言ったらわかるんだ!」
「はい! すいません!」
この元気のいい返事はもちろん強制的にやらされてます。
なぜこんな状況になっているのか俺が聞きたいぐらいだ。
思い出すのだ俺。
確か俺の素振りを見てるだけのじいさんを楽しませようと思って、チェルノとの連携を見せた。
何種類も武器を持っていける俺に興奮して剣技を教えたくなったらしい。
なんとこのじいさん昔は剣術道場やってたそうな。
どんな武器も扱うのが売りの道場だったらしいが、極めたい人にとっては人気がなかったらしい。
そりゃそうだ。何種類も持って歩いてるやつなんていない。
その歳になって最高の弟子を手に入れたじいさんは厳しい。
本人はできるだけ優しくするように心がけてるそうだが信じてない。
あまりにも毎日全身が痛いので死ぬ気でセルフを覚えた。
毎日魔力が切れるまで使っている。
三種類の武器を交互に覚える練習方法だった。
とりあえず必須の盾と剣、これを覚えないと二層に行けないからな。
あとはじいさんのおすすめの二刀流と両手剣。
女の子に受けがいいらしい。
全力で了承した。
予定では一月も修行するはずではなかったはずか、気づいたら半年近く経ってた。
魔法の方も順調……とは言わないまでも習得していってる。
師匠に聞いたが魔法は全部で十種類の属性があるらしいんだが、
人は大体三〜四種類しか覚えれないらしい。
俺は既に『火』『水』『土』『闇』『光』『聖』で既に限界を超えてた。
すごいんじゃね?と思ったらLvが低いのならなんとか覚えれるらしい。
喜んで損した。
チェルノは『闇』『聖』『雷』の三種類だ。
セルフ、サイレントウォーク、コンダクトを覚えてた。
難しいところから行くところが性格出てるなと思う。
ちなみに書店にはLv3までのしか売ってなかった。
深層に行けば出るのかな。
ここでギルドカードを確認しておく。
クラウス・28910 位
Lv 18・無職・到達階数 : 2 所持金:1,120,000
STR : 11 CON : 11 DEX : 11(+1) AGI : 11 INT : 11 WIS : 11
魔術(火 : Lv1 水 : Lv1 土:Lv1 光 : Lv1 闇 : Lv2 聖:Lv3)
剣術:Lv32(二刀:Lv27 両手:Lv36)弓術 : Lv15
チェルノ・(契約:魔法生物)
Lv 16・液体金属・到達階数 : 2
STR : 0 CON : 6 DEX : 14 AGI : 22 INT : 16 WIS : 17
魔術(雷:Lv2 闇:Lv2 聖:Lv3)
ダンジョン以外でもレベルが上がるってことが証明されてた。
装備されてるだけで上がるチェルノも気持ち悪いが。
あと転職は出来なかった……。
それぞれの職に必要なステータスの数値が最低でも『15』いる。
軒並みまだ『11』しかなかった。
まあそれはレベル上げれば解決するんで今は放置でいいや。
今日は両手剣を振り回す日だ。
チェルノに
この剣は師匠がくれた。ありがたく頂戴した。
両手に持った大剣の刃を下に向けたまま自分を中心にグルグル回す。
いつもの体操をしながら、
「師匠、そろそろ免許皆伝じゃないすか?」
「ふん。たった三種類の触りだけであろう……確か二層で足踏み中であったか?」
言わせんな恥ずかしい……うなずくだけにしておいた。
なぜかニヤつく師匠。嫌な予感がする。
「そうだなあ、十層を突破できれば考えてもいい。明日から挑戦してこい」
「言ったな? 速攻で突破してきてやる。忘れんなよ」
まだニヤニヤしてる我が師匠。
十層まで行けない理由でもあるのか?
「あぁ、あとこの指輪を持っていけ。」
ステータス上昇効果のある「消耗品」らしい。
いつパキッと行くかわからないから、頼るなと注意された。
ありがたく受け取った。
そんなに心配するほど難関なのだろう。
なんにせよその答えを見つけに行くしかないようだ。
そんな低層などにかまってる暇はない。
俺には待ってくれている人がいるんだから。
まだ見ぬ女性に追いつくために全力を尽くす誓いを立てるクラウスであった。
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