第4話 食べる友達


 魔術『ライト』は閃光系統の魔法らしい。

 有効時間は2時間だ。

 暗い方なら自信あるんだがなあ。

 魔力で作った熱量を光源にすりゃいいってことかな……ふむふむ。



 ——" 暇だね "



 俺の横で寛くつろいでる液体金属がなんか言ってる。

 あ”! リュックの金具食いやがった!

 どうしてくれんだ……まいいか銀貨2枚だったし、また買えばいいか。

 てか金属食うのか。なんか持ってなかったかな。


「これ食うか?」


 ショートソードを鞘さやごと差し出してみた。

 どうせ一時は使わん。

 剣もロングソードを買って練習したほうがよさそうだし。


 液体金属は、俺の手の物をしばらく見つめて固まっていたが、



 ——" いいの? "



「食べれる物ならな」


 俺がそう答えると液体金属は恐る恐る手を伸ばしてきた。

 差し出したショートソードを「カシャ」という音を立てながら受け取って見せた。

 しばらくその剣と俺を交互に見つめていた。


 さすがに食えんか。100%金属ってわけじゃないしなあ。

 材料屋にでも寄ってインゴット買うか。


 と思ってたら丸ごと行きやがった。

 口から飲み込むような形で……。

 バリバリいくんじゃないのね。


「う、うまいの?」


 どうなの? すげー気になる。塩加減とかどうなの?

 あたためますか?



 —— " うん。おぼえた "



 うまいかどうか聞いてんだよ。

 おぼえたってなんだ、おぼえたって……おぼえた?


「……覚えた?」



 —— " うん "



 そう言うと俺に向かって、体を捻るように飛び上がって来る液体金属。

 思わず受け止めた俺の手の中には……短剣があった。


 なっ、どうなってんだ……とりあえず鞘から剣を引抜いてみた。

 というかこの時点で剣と鞘と二つになってんだけど、そこはいいのか?

 ツッコミどころ満載だがとりあえず、そこら辺の草を切ってみた。

 切れ味はほとんど同じ感じだ。

 限りなく近いコピー品だが、問題はそこじゃない。


 ムチャクチャ……軽い。軽量で切りにくいとかじゃなく振った感じが軽い。

 重いなら話はわかる。元のサイズから小さくなってるんだからな。

 だがなんで軽いんだ?

 聞くか。


「おい。性能は同じ感じなのに、軽いのはなんでだ?」



 —— " ボクの核が他次元に足を着いてるからだよ "



 ほー、さっぱりわからん。

 足が長いってこと?


「ま、ということはだ。食べたものに変身できると」



 —— " すごい? "



 やばい。調子に乗るタイプだこいつ。

 だが……確かにすごいな。認めるよ。

 手に持った短剣を掲げて、


「ああ、すごい。お前はすごいやつだよ」


 と褒めちぎっといた。

 液状の人型に戻ると、しばらくそいつはクネクネしてた。

 照れてるぽい……わかりにくいわ。



   ——



 暗くなるまで弓の練習した後、俺は街に帰った。

 それから宿に戻って横になった。

 ちらりと横を見るとあってはならない短剣ショートソードが置いてあった……。


「で、なんでいるのお前は」



 —— " だってまだ名前つけてもらってない "



 そうなのか。名前がないと友達になれんのか。

 俺ネーミングセンスないのよねー。


「チェルノ……お前の名前はチェルノだ。よろしくなチェルノ」


 押しきろうそうしよう。



 —— " …… "



 あれ。めっちゃ考えたよ?

 わりと真剣に悩んだのよ?


『よろしくお願いします! クラウス!』


 主と書いてクラウスって……。


 え?

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