【Episode:21】 世界の終わりに -In the World End-

不可解な事実

 瞼を開けると、清冽な朝日が眩しかった。

 しばらく眠っている内に、朝が訪れていたらしい。


 小高い丘の上で横たわっていたハルキは、ゆっくりと立ち上がると、背中に括られているパラシュートを外した。


 眼下に広がる砂浜へと目をやる。

 そこには、ジョシュアとニースが、波打ち際で、互いの身を折り重ねるようにして横たわっていた。


 トランス・モードの影響で深い眠りへと誘われ、それから覚めて、まだ酷い頭痛がするものの、それだけで済んだのは幸いだろう。後で後遺症が出ることもあるかもしれないが、今はそんなことを考えている場合ではない。


 ハルキは、長時間に渡る戦闘の疲弊が残る身体に鞭を打ちながら、小高い丘を下りて、砂浜へと向かった。


     *


 小高い丘の先に広がっていた森を抜け、砂浜へとやって来た。

 ジョシュアに覆い被さられているニースの元へと寄る。


 墜落寸前で脱出をはたしたハルキと違い、シオンにそうした様子はなかった。

 プロテクション・フィールドが守るのは、レーザー砲撃による攻撃だけ。墜落の衝撃を緩和できたわけではない。あれだけの衝撃を受けては、機体は無事だとしても、中にいるパイロットは無事では済まないだろう。

 だが、死んでしまったとは限らない。その生存を確認して、もし生きているようなら--。


 ハルキは、ニースの赤い機体の胴体になんとかよじ上ると、レーザー・ガンをかまえながら、そのコックピットと思しき部分のハッチのボタンを押した。


 ゆっくりと、そのハッチが開く。


 そのコックピット内を見て、ハルキは驚愕に目を剥いた。



 そこに座っていたのは、シオンではなかった。

 シオンの容姿は、写真などで見たことがあるわけではないので知らないが、確実にそうではないと分かる。


 なぜなら、そこにぐったりと瞼を閉じて座っていたのは、人間ではなく、人造人間アンドロイドだったからだ。

 容姿は人間の若い女性を模しているが、傷ついた手首や脚から、内臓されている電子機器や配線が覗いている。



「どういうことなんだ……? 俺が戦っていたのは、シオンじゃなかったのか……?」


 どういうことか検討もつかず、呆然とハルキが佇んでいると、

「秋南ハルキ君、だね」

 突然、背後から声がした。

 

 はっと振り向くと、そこには、波打ち際に、一人の、豊かな白い顎髭を蓄え黒いタキシードに身を包んだ老人男性がいた。


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