残酷な眼差し


 プラセンタを離れて地上に出たサミーは、辺りにきょろきょろと目を配りながら歩いていた。


 しばらくして、その先の地面に、あるものが転がっているのを見て、激しく狼狽えながら、その元に駆け寄った。


 必至な形相で、その転げていたものを、抱きかかえる。


 それは、ピィだった。

 サミーの代弁者である、鳥型の愛玩ロボット。

 その小さな胴体には小さな穴が穿たれ、そこから青白い火花を散らしていた。


 動かなくなったピィを抱きかかえながら泣きじゃくるサミーの背後の岩肌の影から、ぬっとあるものが姿を現した。


 サーチ・アイ--シオンが放っている殺戮兵器だ。


「サミー、逃げろ!」

 ハルキが叫ぶ。

 だが、その声は、映像の向こうにいるサミーには届かない。


 宙を滑りながらサミーの背後に忍び寄ったサーチ・アイが、その冷たい眼差しを閃かせた。


 一筋の白い閃光がその場を駆ける。


 ばたりと地面に倒れ伏すサミー。壊れたピィがその場に転がる。

 穿たれたサミーの左胸の傷口から、どくどくと赤い血が流れ出て、茶色い岩肌を染め上げていく。


「サミーーーーー!!!」

 夜の静寂を破り、ハルキの悲痛な叫びが木霊した。



 ハルキとノアが悲しみに暮れる中、血を流して倒れ伏すサミーと壊れたピィの元に、一機、また一機――と、新たなサーチ・アイが寄り集まって来た。まるで血肉に群がる猛禽のように。


「さあ、目玉君たち。ゲートはそっちだよ」

 冷淡なシュウジの声。


 その声に促されるように、サーチ・アイの群れが、モニターの別ウインドウに映し出されていた、開かれたゲートの中--ここプラセンタへと侵入をはたしていく。


 惨憺たる光景を目の当たりにしたハルキが、言葉をなくして呆然と立ち尽くしていると、突如、眼下の方から、爆音が響いてきた。


 はっと我に返り、そちらへと目をやると、眼下に望む合宿所が倒壊し、火の手が上がっていた。

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