失態

〈プロテクション・フィールド、エネルギー残量30%〉

 ジョシュアのコクピットに乗るハルキに、女性的な合成音声が告げる。


 ハルキの操縦するジョシュアは、敵無人戦闘機部隊ヴァルチャーズの集中砲火を浴びて、その盾として自機の周囲に展開させているプロテクション・フィールドを、徐々に剥がされつつあった。


「ハルキ、一旦退いて補給。その間に、ジークが敵部隊を引きつけておいて」

 エノシガイオスに乗るノアが指示を飛ばす。


「OK。任せとけ」

 アルツ・ヴィマーナに乗るジークが答える。


「悪い、ジーク」

 ハルキは詫びると、ジョシュアを戦線から退けさせて、洋上で援護砲撃を放つエノシガイオスの元に飛ばせた。


     *


「いい、ハルキ。このままじゃ、こっちが全滅させられちゃうわ」

 ノアがハルキに言う。

 ジョシュアを補給させつつ、その間、敵無人戦闘機部隊ヴァルチャーズを引きつけているアルツ・ヴィマーナに援護射撃をしながら、会話までこなす。

 ノアが天才と言われる所以だ。常人であれば、これだけのマルチタスクはできない。


「形勢は圧倒的にこっちが不利。だから、それを転じるためにも、ガイオスの主砲を使って、敵の大多数を撃墜させる」

「分かった。俺はどうすればいい?」


 これまで、逃げ惑うばかりでまともな働きができていない。ここで踏ん張らないと、これからも落ち零れ呼ばわりは続く。少しは意地を見せないと。


「主砲のエネルギー充填は済んでるわ。だから、ハルキ達は、主砲が最大限効果を出せるように、敵部隊をなるだけ一点に集めておいて」

「そこを主砲で狙うわけだな」

「うん、それじゃあ、補給は済んだみたいだから、任せたよ」

「ああ」


     *


 補給を受け終えたハルキは、そのジョシュアを、アルツ・ヴィマーナが引きつけている敵無人戦闘機部隊ヴァルチャーズの敵陣の中に突っこませた。


 敵部隊は、ジョシュアがこのチームのウィークポイントだと既に見抜いているから、これまで通り集中して狙ってくるだろう。

 だったら、それを利用して、その敵部隊を一点に集めてやる。


 そう考えて、これが最後の賭けだと、エネルギー残量を気にせずに、ありったけのレーザー砲撃を敵部隊に浴びせつつ、敵を引き寄せ続けた。



「今よ、ハルキ、ジーク、避けて!」

 ノアからの号令が飛ぶ。


「了解!」「待ってました!」

 ハルキとジークがそれに答えて、それぞれ、ジョシュアとアルツ・ヴィマーナを、ブースターを全開にして、その場から急速に離脱させる。


「それじゃあ、行くよ、主砲、発射!」


 ノアが声高に合図した時だった。

 ジークが撃墜した敵無人戦闘機ヴァルチャーの一体が、きりもみ状態となって、ジョシュアに激突した。

 その衝撃を受けて、ジョシュアが弾き飛ばされる。

 そこを、エノシガイオスの主砲から放たれた陽電子の束が貫く。


〈あなたは、撃墜されました〉

 アラートが鳴る中、聞き慣れた合成音声が淡々と告げた。

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