【Episode:09】 夏合宿 ― Summer Training Camp―

しごかれるハルキ

 学校が夏休みに入った初日の朝、世界再生機関リバース本部の駐車場に集まったハルキ達候補生カデッツは、夏合宿のために、マイクロバス数台で、住む街を遠く離れた森の中にある合宿所へと向かった。

 マイクロバスがエアカーでないのは、候補生カデッツたるものに、優雅に空を飛んで--などと甘やかせるわけにはいかん、という、分かるようで分からない伝統的な習わしがあるからだ。

 

 ハルキはその道中、マイクロバスの車内で揺られながら、憂鬱な気持ちで塞ぎこんでいた。

 『落ち零れのDディー・ファーレン・スピル』である自分が、果たして、六日間の訓練を無事終えることができるのだろうか。

 訓練四日目には、ノアとジークと組んでの、仮想『Operationn Phoenixオペレーション・フィーニクス』なるシミュレーション訓練が開かれることにもなっている。

 そこで、他の二人に迷惑をかけるような失態を演じなければいいのだが。

 そんな不安ばかりが先に立って、窓外を流れる景色に目を向ける余裕もなかった。


     *


 出発から一時間程で、プラセンタの北端にあるZ22区画にある合宿所に到着した。近くに小高い丘がある、森に囲まれた中に立っている。


 その合宿所に入って荷物を置くと、さっそく訓練が始まった。


 鬼教官として知られるジークによる訓練は、その名に恥じない厳しさだった。ジークとは友人ではあるものの、普段からの訓練においても、一度も容赦されたことはない。


 長距離のランニングや筋トレなどを、ほとんど休みなく続けさせられ、夕暮れ時の午後六時になって初日の訓練を終えた後、ハルキの身体は、あちこちが痛みに喘ぎ、悲鳴を上げていた。


 合宿では、自分達の面倒は自分達で見ることが義務づけられているため、夕食は、候補生カデッツ皆の手で、カレーを作ることになった。


 出来上がったカレーは中々の味で、ハルキは大の好物だったが、訓練の疲れのせいか、あまり喉を通らなかった。


 その後は、交代で大浴場に入って訓練の汗を流した後、やっとのことで自由時間となった。

 候補者達全員が集う大ホールにいながらだが、午後十時の消灯時間まで、思い思いにすごすことができる。一時の安息だった。


 だが、ハルキは、他の候補生カデッツ達が、談笑しつつ思い思いにすごす中、早々に布団を敷くと、すぐに眠ってしまった。

 訓練での疲れはピークに達していて、遊ぶよりも、早く眠ってしまいたかった。


 初日からこんな調子で、明日からの訓練を乗り切れるのかどうか。


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