研究施設
美那川と別れて、カフェでゆっくりした後、ハルキは、再びノアの買い物につき合わされた。
合宿のための買い出しとか言いながら、購入したのは、それとはまったく関係がない洋服や雑貨類ばかりだった。
女子の買い物につき合わされるのは大変だからな、と前にアラタが物知り顔で語っていたが、事実そうだと痛感していた。
午後三時を回ったところで、ノアはあらかた買い物を終え、その荷物は街中に設えられているコインロッカーに預けて、全自動エアタクシーに乗った。
これから向かうのは、ここからそう遠くない、同じB区画にあるソフィアの職場だ。
ノアはまだソフィアの職場を訪れたことがなく、一度そうしてみたいと前々から話していたから、この時間を使ってそうすることに、前々から決めていた。
スカイウェイを全自動エアタクシーで飛び、十分程で、ソフィアの職場である、
その駐車場で、地上に降りた全自動エアタクシーに料金を支払って、車外へと出たハルキとノアは、その館内に向かった。
エントランスで約束していたソフィアの娘であることを告げ、了解を得て、ソフィアが主任を務めている研究室のある五階へとエレベーターで上がった。
*
「私には難しすぎるよ。お母さん、さっきからなに言ってるか、さっぱり分かんない」
ノアが難しい顔をしながら、ソフィアに訴えた。
「そんなに難しかった? ノアなら少しは理解できると思ったんだけどな」
ソフィアが、あっけからんとして。
研究施設五階にある研究室。
ジョシュアなどに搭載されている
ソフィアはその一番奥のデスクで、矩形の
戦艦エノシガイオスの操縦だけでなく、学業においても優れた成績を残すノアでさえまったく分からないというのだ。
ハルキは、最初から理解を諦めて、聞き流すだけにとどめていた。
「せっかく訪ねて来てあげたんだから、もっと楽しいことしようよ。色んなところを紹介してくれるとかさ」
ノアが不満げにぼやく。
「主任、主任の趣味にいつまでもつき合わせてちゃ、ノアちゃんが可哀想ですよ」
そうソフィアに言ったのは、年の頃四十代前半程の、ジョンという名のアメリカ人男性職員。
「そうですよ、主任。ノアちゃんは、普通の可愛らしい女子高生なんですから」
続けてそう言ったのは、今年の春に入所したばかりの新米職員だという、ロアナという名の若いフランス人女性。
「二人とも、私のこと、研究が趣味で女らしくないって風に馬鹿にしてない?」
ソフィアが心外だというように眉をひそめながら。
「違いましたか?」
とジョンが意地悪な笑みを浮かべる。
「違います」
ソフィアは怒ったように返すと、
「分かったわよ。それじゃあノア、適当に色々紹介して回ってあげるから、ここを出ましょう。私は彼らに嫌われてるみたいだしね」
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