事故
昼の休憩を終えたハルキは、再び拡張工事の手伝いを再開していた。
身体はもう限界にまできているが、あれだけ見こんでくれたイエタカを裏切るわけにはいかないと、普段あまり見せない根性を出して、なんとか踏ん張っていた。
と――。
ガシャアアアアン!
指定された場所に、両手に抱えていた金属板を置いた時、横の方から、なにか大きな音が響くのが聞こえてきた。
同時に、
「お父さん!」
スズカがそう叫ぶのが聞こえてきた。
はっとそちらへと目をやると、それまで足利が作業していたところに、上から落ちてきた鉄パイプが積み重なっていた。
*
イエタカが、上の作業場から落ちて来た鉄パイプの下敷きになったとあって、他の作業員らが慌てふためく中、ハルキは、工作用ロボットの方へと駆けだしていた。
あれを使うことができたら……。
自分に、その適性があるかどうかは分からない。
ジョシュアの適正があるとは言え、
実際、自分は、ジョシュアのシステムに適正があるだけで、エノシガイオスとアルツ・ヴィマーナにはそれがないことが分かっている。
三機とも全部に適正があるのは、天才であるノアくらいのもの。
普通であれば、その九割以上が、どのシステムにも適正なしと判断される。
工作用ロボットということで、ジョシュアなどに搭載されているものよりは性能が劣るだろうから、その分その判断基準が下がるのかもしれないが、それでも、適正があるかどうかは、試してみないと分からない。
イエタカは、ここにいる他の作業員には、誰にも適正がないと言っていた。
だが、今はその可能性に賭けるしかない。
ハルキは、工作用ロボットのコクピットによじ上って座ると、コンソールに置かれていたヘッドギアを嵌めた。
〈
告げると同時に、下ろしたバイザーに、文字列が浮かび上がる。
〈認証完了。操作可能です〉
機械的な合成音声が伝えた。
「よし、いける!」
ハルキは拳をぐっと握り締めると、シミュレーション訓練でジョシュアの操作をするのと同じ要領で、頭の中でその動きを思い描きつつ、
「皆さん、そこをどいてください!」
と積み重なった鉄パイプの傍に寄り集まっている他の作業員達に呼びかけて、その場から退けさせた。
それを見てとると、工作用ロボットをそこへと向かわせ、
「足利さん、今助けますからね」
イエタカへと呼びかけながら、工作用ロボットを操作して、その鉄パイプを、一本ずつ慎重にとりのぞいていった。
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