【Episode:03】 悲運の竜 -Dragon of the Sad Fate-
ピクニック
七月になり初めての土曜の朝。
学校だけでなく、
ハンドルを握るジークのその呼び名は渾名で、本名はジークベルト・ブルクハルト。
ドイツ人で、三十二歳の男やもめ。顎先に生やした三角の髭がトレードマーク。
巨大戦闘機アルツ・ヴィマーナの
『
軍生活が長いこともあり、自分にも他人にも厳しいが、訓練以外では、気さくで話しやすく、ハルキは友人としてのつき合いを、
「いい天気だよね」
後部座席に座るノアが、窓外へと目をやりながら。
予報では、この区画は今日は曇りとなっていたが、どうやら外れたらしい。これだけ科学が発展した世の中であっても、自然の流れを正確には予測できないでいる。
「うん、晴れてよかった」
とその左隣に座るサミーが、嬉しそうに。肩にはいつもどおりピィをのせており、そのピィが代わりに喋っている。
「アレクシオ神父も一緒だったらよかったんだけどな」
とノアの右隣に座るハルキ。
アレクシオとは洗礼名で、三年前の爆破テロで両親を失ったサミーを引きとって育ててくれている心優しい神父である。
ハルキは、毎週日曜になると、育ててくれている叔父に連れられて彼の教会のミサに出向いてその話を聞くこともあれば、先日のように、サミーや他の友人達と一緒に、菓子作りが趣味な彼が手作りしたおやつを頂いたりもする。
その神父のアレクシオも誘ったのだが、彼は教会の仕事があるらしく、今回は遠慮しておくとのことだったが、おやつにと、手作りのクッキーを焼いて持たせてくれた。
「俺の愛車の乗り心地は最高だろ?」
とハンドルを握るジークが自慢げに。
「エアカーだったら、もっと気分が出たかもしれないけどな」
ハルキが茶化すように言うと、
「地面の上をタイヤで走るのが、ドライブの醍醐味なんだよ」
分かったような答えが返ってきた。
「僕は、エアカーよりも、こっちの方が好きだよ」
とサミー。
「ピィも好き! ピィも好き!」
とピィが翼をパタパタとさせながら、一人二役で続く。
「サミーとピィはよく分かってるな。ハルキももうちょっと見習え」
「はいはい、そうですね」
ハルキが適当に受け流す。
そんなやりとりを聞きながら、ノアが「ふふ」と楽しげに笑う。
そんな和やかな雰囲気の中、一時間程ドライブを続け、正午前に、目的地である、湖が広がる高原に到着した。
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