ラプンツェルの悲劇


また何処かで、若い女性の死体が見つかったらしい。

その女性は、鋭利なもので身体中を何度も繰り返しめった刺しにされ死んでいたそうだ。

毎回この殺され方である、一体もうこれで何件目だろうか。襲われる女性は必ず髪の長く若い女性ばかり今回の被害者も無造作に髪を切られいたという。

しかし、金銭目当てなどではなく被害者は一人もなにも盗られてはいない、明らかに犯人の目的は髪のみであり女性に対して何に強い恨みなどがあるというのかそしてこのような犯行になんの意味があるのかそれら数々は一体なんの意味がありそれぞれ何を示しているのかは未だに不明だとさ……


***


女性の髪はとても美しい

その他にも美しいものは多数あるがその中でも髪が一番美しいと思った。

いつしか女性に憧れ着飾ることが楽しくて好きになった。

こんな自分を勿論世間や家族はよくは思わなかった気色悪いなど避けられいつもここから先は行き止まりのように線を引かれ人と距離を置かれている感覚があった。

そんなのはっきり言ってどうだってよかった。

所詮自分は自分なのだから。

あれが羨ましい、それが欲しい、これが羨ましい

どこが欲しい……全部なのか……女は許される事が多いのに男だと許されないことが多すぎる。

そんなの、不平等すぎないか……

なぜ、許させることが許されない。


欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい


欲しいもの愛しいもの美しいもの儚いもの望むもの

何もかもが許されない。

欲ばかりが膨らみいつしか手には入るものやなかなか手に入れられないものの区別が激しくなり自分だけのものにしたいとその欲の方向が「食」してしまえばいいという道になった……

自分だけのものにしたい、誰かに見られ軽蔑されるぐらいなら、誰も気づかない所へ自分の体の一部にしてしまえば良い、そして欲しいものを得たら自分と同じものをもつ人なんていらない。

消してしまえばいい。

全てを飲み込んで全てを消してしまえばいい。

そんな歪んだ方向へと曲がっていってしまった。

どうしてだろうね。

自分でもわからないよ。

ただ綺麗なりなかった、女の人っぽいことの何が悪いのかそれをなんで嫌がる人がいるのか当時の私には理解できなかった。

誰も理解してくれる人なんていない。

それだけなのだから……

一番美しいと思ったもの欲しい手にいれたいと思えば思うほど、無差別に人を消していった。

今日もまた女性を襲いました。

長くてまっすぐな黒髪……近づいて少し話してから人気のない所に自然に誘導し隙が見えたその瞬間を狙って何度も何度刺し続けた、人が来てしまうかもしれないからまずは先に喉を切り裂き無抵抗になるまで続けた。

人というのはこんなにも簡単に死んでしまう、実に悲しい程に脆いものだとつくづく思い知る、まぁそんな事に興味なんてない、どうでもいい事だから

自分にはないこの美しさこれが私の求めているもの全て

どうして私にはこの美しいものが手に入らないのだろうか、理想だった、でも自分にはない。

妬ましいとしか思えなかっただから、今日も私は女性の髪を切りその場でその髪を口に運んだ……

味なんて感じないでも鼻や口から花のような匂いを感じ

る、それを不快に思いつつも私は無心で食べ続けた……

全てを飲み込んだあとは、人に気づかれないようにその場を後にした。

いつも繰り返しているのに今日は気分が悪い……

あの女の匂いがいまだに残り吐き気がした。

吐いてはいけない、吐いてしまったら私の今までやってきた努力が水の泡となる。

せっかく手に入れたのに……

だが、人の胃は髪の毛を消化することができない

それは知っている最悪の場合死にいたるということも知っている、それでも私は手放すわけにはいかない。

まだ……まだ足りない………

自分のは食べらない……こんなものより他の人の方がとても魅力的で欲しくて欲しくてしょうがないだから食べたくて食べたくてどうしようもない。

でもまだ満たされない、こんなにも食べ続けまだ私は満足できていない。

なぜだ、なんで満足できない最近そんなことが増えていきそう疑問を抱くようになった。

疑問を抱く……なぜ、

私は欲しかっただから奪った。

自分にはもっていないものを欲しかった自分以外同じものをもつ人など必要ないのだ、どうだっていいどうせ皆理解などできない、しようとしない。

私の事なんて……誰も

足りない……足りない……

本当にどうでもよかったのか

本当に誰も理解してくれなかったのか

本当に自分のためだけのものにしたかっただけなのか

足りない……まだ……まだ欲しい……

私は……

私は間違っていない。

私は間違っていない。

私は間違っていない。

私は間違って……なんか……ない


欲しくて欲しくて堪らない

食べたくて食べたくて堪らない


どっちが本心だ……

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ

考えてるな、考えるだけ無駄だ、疑問に思うな、疑問を抱くな、なにも考えるな。気分が悪いからこんな事を考えるんだ……そうだ、ちょっと疲れているんだ……だから

だから……別に何になりたいという欲と食としての欲なんてそんな差などない、どうだっていい。

私は私は………

私は間違ってなんかいない。

間違っているはずがない。

私は女性のように綺麗になりたかった、自分にはないあの美しさが欲しかった、誰も理解なんてできない知ろうとなんてしないはずだ認めてくれなくてもいい。

誰も解らないなら私だけが解ればいい。

だから……だから、食べた……

私だけのものにしたかったから……


まだ欲しい、まだ足りない、欲しい欲しい……

もっともっと食べたい。


食……といして……食べたい……

私は「食」としてまだ足りない。

もっと、もっと、欲しい、食べたい。


我ながらなんて事を考えるんだ……思わず笑ってしまう

気分が悪いからっと言っても、今頃遅過ぎる。

「暴食的でなんて醜い」

気づいていた、最初からわかっていた……

自分のこの醜い嫉妬や強欲的なこの現実から目を逸らし受け入れたくないからだ。

全て解りきっていた……でも……でも

信じたくなかった。

馬鹿馬鹿しい……今頃なんだというのだ。

欲しいと思っただから、奪って私のものにした。

そして、人の命も奪った……

自分の欲のために……

これじゃ、まるでただの化け物みたいじゃないか。

なんて、愚かで醜いんだろう、それでも私はまだ欲しいまだ足りない気づかない振りをし続けていくにつれどんどん欲深くなりそれが強くなった。

もう、取り返しのつかない所まできた

……もう戻れない。

そして、今頃もう全てが遅すぎる……何をやっているだ私は一体……

「私は一体何がしたかったの……」

欲しかった……女性のようになりたかった。

どんなにもので着飾ってもどんなに綺麗にしても満たされない……なれないもの醜い欲が増え膨らんでいきそれだけで……まるで水風船のように破裂し周りに汚い欲という液体を撒き散らしなんの罪のない人々を巻き込んだ。

吐けない……それはまだ私が欲しいと思っているからなのかくだらない。

「吐きそう」

俯きそう呟くと突然声がした、私は慌ててその場を走り去ろうとしただが手首を引かれ手を振りほどこうとも無駄だった。

よく見ると、その人物は警察でもなければ普通とも言えない真っ黒な服に手や顔も包帯で巻かれていたその異様な姿に私は驚いたでも彼はとても冷静に話を淡々と進めてきた。

「そんなに悩やんでいるなら私が手助けをしましょう」

何を言っているのだ…彼はそう言って私に名刺を渡してきた、その人の香水なのか甘ったるい匂いが一瞬香った見た目でどうこう言うのは好きではないがこの姿で医者というのか……一体医者がなんのようだというんだ。

吐き気を堪えながら、その変わった姿の医者から逃げるように立ち去ろうとすると突然目眩がし地面に伏せ思ったように体が動かずその場で意識を手放した……

目を冷ましたとき朝になっていた。

顔や首、手にも何か固定されている感覚があり、起き上がり周りを見渡すと見知らぬ場所であることはすぐに理解した、それよりあんなに吐き気があったのに気分も良くそっちの方が不思議だった何故だろうか普通は取り乱すはずなのにこの時の私はとても冷静であった、口にはマスクのようなもので固定されその首から鎖で手首を縛られ動けないようになっていた。

不自由なので出口はないかこれを外すにはどうしたらいいかと悩み部屋の扉に向かうと昨夜に会ったあの包帯の医者が目の前に現れた。

それから、ここが何処かなぜ連れてきたのか説明をしだし私のこの異常な行為が治るまでここにいてもらうと勝手に決めれしかも今までやってきた私の苦労を、手にいれたはずのものをこいつは私から取り上げたと言った

その時私は激怒し勿論その言葉に反論し今すぐこの拘束を解くように指示し私だけのものを返すように言うと彼は馬鹿にしたように大袈裟に笑い私の今までやってきた罪や病気的な行為を悔い改め治ったらいつでも私を解放してやると言われた。

そんなもの、信じられるわけがない。

何度も私は、彼に言ったでも彼は適当にあしらい私の前から消えた。

それから、脱走も考えただが中々逃げられず今だにここにいる、髪を食べる事ができない私の欲は膨らみ最初はとても辛く部屋でよく暴れた事もあった、今はもうその欲さえも薄れだいぶ落ち着いた。

ここ最近、可愛い子達が隣の部屋にやってきた、双子の女の子たちで外人さんだった。

透き通った綺麗な金髪に青い目だった。

あの頃のように欲しいと思ったが今の私じゃなにもできない、心の何処かでホッとしている自分がいた。

それから、双子の子達に何故かなつかれており、こんな醜い私の所へ遊びに来てくれるようになった。

歪みに歪みきった私の事を双子ちゃんたちは「綺麗」と褒めてくれた……なんでだろうか……今まで私はやってはいけないことをしてきたこの子達はなにも知らない、たまにこの子達でさえ私は「食」と見てしまう事もある。なのに何故この子達は私を「綺麗」と言ってくれるのだろうか……

目から涙が伝い、双子ちゃんたちがそんな私の様子を見て慌てる仕草に笑い、許しなんていらないまだ欲しいと思う事もある、私は今日もこの罪や欲と餓えに耐えながら全てを背負いながら生きています。

この惨劇を

このくだらない自ら作った悲劇の幕は未だに下がることはなくずっと止まったまま……

欲の消えないまま……

私は今日は、生きています。


END

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