第2話



「はい、今日の授業終わり。また火曜日にね」

 長い一週間がようやく終わった。

 明日からゴールデンウィーク。待ちに待ったお休み。家でめいいっぱいゴロゴロするぞ。と言いたいところだが、今年はそうはいかない。

 横を見るとギャル子は待ちきれないとばかりに、速攻でカバンに教科書と筆記用具を詰め込んでいた。おそらく、あれらはこれから一週間、カバンの中にしまいっぱなしにされるのだろう。

 そして彼女は教室の誰よりも早く立ち上がる。その速さは、環境最速の【ゴブリン】デッキにも負けない。

 俺も立ち上がってカバンを背負う。いつもならこのまま部室に行くところだが、とりあえず一度帰宅する。

 今日は部活がない。

 代わりに、夜からトレカ部の合宿が行われるのだ。

 場所はなんと、この時点で不明。俺たちは集合場所と持ち物だけ伝えられていた。先輩いわく「わくわく感も大事でしょ」とのことだった。

 ちなみに事前に持ち物リストには、着替えに歯ブラシといった旅行なら当たり前のもの以外に、水着なんてものも入っていた。正直、先輩の水着姿を見れると思うと、それだけでテンションが上ってしまう。毎日の練習に耐えてきたかいがあるというものだ。

 帰宅すると珍しく妹の「おかえり」という声が聞こえてきた。玄関には大きいキャリーケースが置かれている。

「どっかいくのか」

 俺が尋ねると、

「うん。アメリカ」

 妹は近所のコンビニにでも行くかのような口ぶりで言った。

 世界で戦う妹にとって、アメリカに行くのはなんてことないことなのだ。こういうふとした瞬間に、妹のすごさを感じる。

 ちなみに、俺は日本から一歩も出たことない。もっと言うとパスポートも持ってない。多分、パスポートを取るのは二年後の冬、つまりオリンピックイヤーの前になるだろう。

「一週間帰ってこないから。お留守番よろしく」

「あ、俺も明日から合宿なんだよね。あ、いや正確には今日の夜から」

 俺がそう言うと、

「合宿?」妹は怪訝な顔をした。「お泊り会ではなく?」

「一応、今度の県大会に向けての強化合宿」

「カードで、強化合宿??」

 まあ、それが普通の反応だわな。

 だが、この一週間トレカ部にいて分かったのが、桜木先輩はとにかく本気だということだ。彼女にとって部活中のデュエルは、遊びではなく、「練習」なのだ。ゆえに、今回の合宿も、「お泊まり会」ではなく「強化合宿」。

「まぁ、一応日本一目指してやってるからね」

「ふーん」

 妹はばっかみたい、という表情をしながら部屋に帰っていった。


 ◇


 夕飯を食べてから、学校の最寄りの駅に集合する。待ち合わせ場所には既に桜木先輩とギャル子の姿があった。

 先輩たちは俺の倍くらいの大きさのキャリーケースを携えていて、ああやっばり女子は荷物が多いなと実感する。

「お疲れ様です」

 俺が近づくと、先輩が手を挙げて「お疲れー」と返してくれた。シャンプーの香りがふわっと漂った。

「はい、じゃあいこー」

 先輩に言われるがまま、上りの電車に乗り込む。

「先輩、あたしたちどこいくんですかぁ」

「もうすぐわかるから」

 電車に揺られること小一時間。大門駅で降りて、浜松町方面に歩いて行く。やがて赤くライトアップされた東京のシンボルが姿を表した。

「東京タワーじゃーん」

 ギャル子が大げさに指差す。俺は心の中で、田舎もんかよとツッコんだものの、よく考えたら実物を見たのは俺も初めてだった。

 そのままさらに十分ほど歩くと、ライトアップされた船のマストが見えてくる。

「もしかして船ですか?」

「そう! これに乗るよ!」

 ついたのは竹下桟橋。フェリーの乗り場だ。

「向かうは伊豆列島、式根島!」

 知らない名前だったので、すぐにスマホで調べてみる。百科事典によると、竹芝桟橋から八時間のところにある、人口三百人の小さな島らしい。

 船は夜の十時に竹芝桟橋を出て、朝六時頃に付くようだ。

「おお! あたしフェリーに乗るの初めてです!」

「俺もです」

 さすがに明日からゴールデンウイークということもあって、竹芝桟橋の船乗り場は、人であふれていた。

 建物の中で出航の時間を待っていると、三十分ほどで乗船が始まった。

「すごーい、タイタニックみたい!」

「いや、沈むのは困るけど」

 とはいえ、ギャル子の気持ちはよくわかる。客船に乗り込むというドキドキ感は確かにある。

 階段を降りて客室に向う。俺たちの席は二等の和室、といっても、畳ではなく赤みがかったカーペットが敷き詰められた大部屋で、奥ゆかしさはみじんもない。仕切りは一切なく、畳一枚分くらいのスペースが白い線で囲われていて、一人用のスペースだとわかるようになっているだけだった。まさにTHE雑魚寝という感じ。

「あたし毛布借りてくるね」

「あ、俺も行きますよ」

「いや、一人で大丈夫。毛布って言っても薄いやつだから」

 そういって先輩は一人で部屋を離れる。

 と、ギャル子が袋から何かを取り出した。

 ……乾パンだ。

「優輝、食べる?」

「……いや、遠慮しとく」

「おいしいのに」

 と、ギャリ子はバクバク(音はザクザク)乾パンを食べ始めた。

「っていうか、姉ヶ崎ってさ、乾パン好きだよね」

「だっておいしいじゃん」

 非常食をおいしいと思えるなんて、災害で避難しても毎日幸せに暮らせるだろう。

 それからちょっとして、先輩が赤茶色の毛布を三枚抱えて戻ってきた。

「はい、どうぞ~」

「ありがとうございます」

 しばらくすると船が動き出す。

「甲板にいこ」

 先輩に言われるがまま、階段を上って外に出ると、風が潮のにおいを運んできた。

 岸のほうでは、ビルが光り輝いている。明日から休みだというのに、きっとあそこでは人々が一生懸命働いているのだろう。

 さらに階段を上って船の屋上に行くと、進行方向に大きな橋が見えた。

「あれ、レインボーブリッジ! あそこくぐるよ」

 ちなみに、レインボーブリッジを‘現場“でみるのも初めてだ。

 意外と普通の橋だな、と思った。確かに大きいけど。

「写真取らなきゃ!」とギャル子がスマホでパシャパシャ写真を撮る。が、夜景を取るのは難しいらしく「ちっちゃくしか撮れない」としょげていた。なんかかわいい。

 ふと目線を横にそらすと、柔らかい風が先輩の黒髪を揺らしていた。

 桜木先輩が自分のすぐ隣にいる。夜景なんかよりも、先輩の方がずっと綺麗だった。

 ビルの潮風と波の音だけの世界。しばらく緩やかな時間が流れる。

 すごくいい雰囲気が漂う。

 と、その時だった。

「よーし。じゃぁデュエルしようか!」

 先輩が俺たちの肩をバンッっと叩いた。超唐突だった。

「合宿だからね! お泊り会じゃないから」

 そう、俺たちはあくまでアーツ上達のために来たのだ。

「夜は長いよ!」


 ◇


「優輝くん、起きて」

 固い床とごわごわの毛布に包まれた浅い眠りは、先輩のその声で遮れた。

 当初は、最低二時くらいまではぶっとうしでデュエルと思っていたのだが、実際は割と早い段階で消灯してしまい、結局いつも通りくらいの時間に眠りについたのだ。

 だが、いかんせん硬い床。快眠など望むべくもなく。逆に浅い眠り故に、起き上がるのがさほど苦ではなかった。

「もうついたんですか?」

「そろそろ着くよー」

 起き上がって横を見ると、ギャル子は爆睡していた。こんな硬い床で、よくそんなに幸せそうな顔で寝られるな感心する。

「おーい、つくらしいぞ」

 ギャル子の腕を揺する。

「んー。無理」

 何が無理だ。

「リンボーダンス……」

 なんで夢の中で棒の下くぐってんだよ。

「レインボーブリッジはくぐれないよ」

 いや、くぐれるだろ。てかさっきくぐってきたよな。お前はいつから巨人になった。

「でも頑張る……」

 そうか、頑張るのか。頑張る必要はないと思うけれど。

「なんか、簡単に起きそうにないですね」

「まぁ、まだちょっと時間あるから」

 とりあえず、ギャル子の寝起きが悪いことだけはよくわかった。


 ◇


 式根島に無事に到着。

 船から出ると、入れ替わりに船に乗る人たちと、民宿の名前が書いてある旗をもって客を迎えに来た人たちが港に溢れていた。

 船から降りるための橋を、船員と、なぜか警察も一緒になって抑えていた。やはりこういう田舎では、警察が民間の人たちを助けるなんて光景が当たり前なのだろうか。

「上陸!」

「とりあえず写真取りましょ」

 そう言って、ギャル子が自撮り棒を取り出す。でました、リア充グッズ。

「とりまーす。はい、チーズ」

 上手く笑顔が作れなかった。もっと自然に笑顔が作れる「はいチーズ」に代わる言葉を誰か考えて欲しい。

「これから泊まる民宿が‘三木’ってとこね。迎えに来てくれてるはずだから、名前を見つけて」

 しばらくキョロキョロしていると、扉に三木と書いた車を見つけた。麦わら帽子をかぶっていて、いかにも田舎のひと、って感じのおじいちゃんが乗っていた。

「お世話になります!」

「はい、どうも」

「どこから来られたんですか」なんていう定番な質問から本当に当たり障りのない会話をしているうちに、ものの五分で宿に着く。

「ありがとうございます」

 車から出ると、もう本当にTHE家っていう建物が現れた。民宿って、思ったよりもはるかに普通の家なんだなと驚く。本当にどこにでもある瓦屋根の木造建築。

「お邪魔します」

 中に入るとおばあちゃんの家と同じ匂いがした。玄関には靴が散乱している。おじいちゃんに先導されて、幅の狭い階段を昇っていく。

「こっちが男性、こっちが女性の部屋ね。トイレは廊下突き当りに、シャワーは下の階にあるから」

「シャワー使っていい時間とか決まってますか?」

 先輩が聞くと、おじいちゃんは「ご自由に」とぶっきらぼうに答えた。

「じゃあ、荷物置いたら、ひとまず観光しましょ。服の下に水着来て、タオルとかだけリュックに入れて外に集合ね」

 そういって先輩とキャル子は自分たちの部屋に入っていった。

 俺も自分の部屋に入り、着替えていると、隣の部屋から声が聞こてくる。

「っていうか先輩水着かわいいですね」

 壁が薄すぎて、話がまる聞こえだった。

「晴夏ちゃん胸おっきー」

 別に悪いことはなにもしてないのに、罪悪感を覚える。

 俺は手早く、着替えて先に外に出る。その後数分で先輩たちも外に出てきた。

「よーし。じゃぁいきましょうか」

 宿の人がくれた島の地図を広げる。地図によると、島は外周で五キロほど。

「とりあえず、自転車を借りましょ」

 民宿のすぐ隣が自転車のレンタル屋だった。一日三千円で電動自転車を貸しだしていた。

「まぁ大丈夫だと思うけど、電池切れても替えてあげるから」

 電動自転車というものの存在は知っていたが、実際に乗るのは初めてだ。

「よーし、出発」

 先輩の掛語で俺たちはサドルにまたがった。ベルの横にあるスイッチを押し、ひとこぎすると、一拍おいて急に加速する。

「おー。すごい!」

 本当になんの力もいらない。どんどん進んでいく。

「やばい、どんどん坂のぼりたい」

 一同、電動アシストの偉大さに感動する。

 ただ風を切る気持ちよさを享受し、数カロリーの消費でビーチについてしまう。

「海だぁ!」

「めっちゃ綺麗ですね」

 白い砂浜にエメラルドブルーの海。弧を描くように岩の絶壁に囲まれていてる。

「テンションあがってきたぁ!」

 まだ春になったばかりの五月、海水浴なんて時季外れすぎると思ったが、太陽の光はサンサンと降り注いでいる。今日ばかりは温暖化に感謝したい。

「さっそく入りましょー」

 先輩はそう宣言すると着ていたTシャツを勢い良く脱ぎ捨てた。ギャル子もそれに続く。

 二人共ビキニだった。

 先輩のは真っ白なビキニ。まばゆい白さ。小さすぎず大きすぎない、形の良い胸。それに、緩やかな流線型の美しいアーチを描いた太もも。非の打ち所がない。

 一方、ギャル子は、思ったよりはるかに巨乳だった。青色の水着に包まれた、その深い谷間に思わず視線が釘付けになってしまう。そして、ほどよく肉のついた太ももが魔的なものを放っている。

 いったいどこを見ていいのかわからなかった。彼女たちのほうを見れば、身体に視線が吸い寄せられてしまうし、かといって海の彼方を見ているのも不自然だ。

「日差し、意外と強いからねー」

 と、先輩たちは日焼け止めクリームを塗りだす。それも、なんとなく見てはいけない気がした。

「ほら、優輝くん」

 そう呼ばれたので振り返ると、先輩が俺にクリームを差し出てきた。

「塗らないと後で痛い思いするよ」

「あ、ありがとうございます」

 と、クリームを受け取ろうとして、俺はそれを地面に落としてしまった。クリームではなく、先輩の胸に視線が吸い寄せられてしまったからだ。

「すみません」

 俺は慌てて拾って、あさっての方向を向く。

「よっしゃー、いざ突撃!」

 そういって先輩は走り出し、何のためらいもなく海に飛び込んだ。

 バシャーン。そして先輩の悲鳴。

「冷たっ。寒っ」

 俺とギャル子は顔を見合わせる。さすがにギャル子も五月の海にいきなり飛び込む勇気はないようだ。

 俺たちは歩いて海に近づき、波に恐る恐る足を伸ばす。

「うわ、冷たっ」

 波が足首に当たるだけで、もう海に入る気が失せてしまった。本当に冷たい。

 と、そんな俺を見て先輩が笑顔を浮かべて、ついでに胸を揺らしながら、寄ってきた。

「ほらほら、ちょびちょびやってたらいつまでたっても入れないよ!」

 腕を思いっきり引っ張られる。次の瞬間、俺は真っ青な世界に引きずり込まれていた。

「あぎゃぁ」

 慌てて起き上がって息を吸い込む。あははと、先輩とギャル子が笑っていた。

「ガチでちょっとやめてくださいよ!」

 とはいいつつも、確かに、一度浸かってしまえば、冷たいという感覚はどこかに消えていく。

「もっと奥いこ」

 唇をなめると潮の味がした。

 エメラルドグリーンの海が広がり、下を見ると六角形に光がプリズムしていた。

 と、もう少し深いところに歩いていくと、足もとで何かが動いた。

「めっちや魚いる!」

 灰色の地味な魚が目立つが、派手な色をした、いかにも南国って感じの魚も泳いでいた。

「ニモいないかな」

 そりゃいないだろう、イソギンチャクがないんだから。

「あ、でもドリーみたいなのはいるぞ」

「え、どこどこ」

「ほら、その辺」

「うわぁ、ほんとだぁ!」


 ◇


 しばらく、俺達は南国の魚と戯れ海を満喫していた。

 だが、ある程度してくると、体が冷えてくる。確かに天気は良いが、やはり五月は五月だ。

「先輩、ちょっと寒くないですか?」

「そだね」

 よし、海から上がって、ビーチバレー、あるいはスイカ割り、という気分ではなくなってくる。

「風邪ひいたら嫌だし、次は暖まろうか」

 先輩はそんなことを言い出した。

「暖まるって?」

「まぁまぁ、私についてきたまへ」

 俺たちは荷物をまとめて、水着のままチャリに乗る。誰もいない田舎道をチャリで漕ぐこと数分。

 チャリから降りて、小道を下っていくと、それが見えてきた。

 黄土色の岩に囲まれた水面から、湯気が立っている。

「温泉、ですか」

「そう! 露天風呂!」

 崖とどこまでも続く海の絶景を独占できる、自然の中の温泉だった。

 雅の湯、という看板が立っている。なんでも皇太子殿下が結婚した際に、皇太子妃にちなんで名づけられたようだ。

 お湯をのぞき込むと、普通に葉っぱが浮いていた。とても衛生的とは思えない。

「これ、入るのなかなか勇気がいりますね」

「確かにぃ」

「まぁ、何事も経験だよ」

 と、先輩がその真っ白ですっとした足をお湯に伸ばす。

「うわぁー熱い」

 俺も恐る恐る手で触れてみる。

「熱っ」

 今まで入ってきたお風呂の中で一番熱い。とても入れそうにないくらい熱い。

 と、俺がためらていると、ギャル子が思いのほかぐいぐい使っていく。

「意外と気持ちいーですよ」

 とは言われても、俺は熱に対してそんなに耐性はない。固まる前のコンクリートにでも沈むように、ゆっくりと浸かっていく。数分かけて、ようやく肩までつかる。海と違って慣れてきても、それでも熱い。

「景色、最高ですね」

「うん、海と空と崖。雄大だねぇ」

 澄み渡った空と海。ゆったりとした時間が過ぎていく。

 そろそろのぼせそうだから、上がろうか、と思ったとき。

 水着姿の三人の少女が、こちらに向かって歩いてきた。全員かなり可愛いことが遠目にもわかる。

「お、来たね」

 先輩が三人に手を振る。

「え、知り合いなんですか?」

「何もこの孤島に、海に入って温泉に浸かりに来ただけじゃないのよー」

 近くで見ると、三人はそれぞれ違うタイプの美少女だった。

「久しぶりー。全日本ジュニア以来だね」

 先輩がそう言うと、真ん中の茶髪の子が元気よく答えた。

「あおいちゃん、久しぶりー」

 その言い方からして、桜木先輩と仲がいいようだ。

 俺は突然アイドルを目の前にしたかのように唖然として、ただうろたえてしまう。

「去年の全国高校生選手権、千葉県代表チームの三人でーす!」

 先輩のその言葉に続いて、三人が自己紹介を始める。

「大野です」

 黒髪ロングでメガネ。学級委員長をやってそうなイメージ。だが、首から下に目を向けると、そこにはギャル子をも超えるダイナマイト級なお胸が揺れていた。そのギャップがけしからん。

「中島でーす」

 一人だけ茶髪。もう露骨にギャル、という感じ。そのギャル感は、ギャル子を凌ぐ。本拠地は渋谷? 原宿? こうしてみると、ギャル子はゆうて進学校のなんちゃってギャルだったのだ。 

「小川っす」

 ショートカットで、肌が焼けており、スポーツ万能そうだ。四肢に目を向けると、筋肉が付いていて引き締まっている。

 この三人、面白いことに名前が大中小になっている。しかも、お胸の方も、大中小になっている。

「っていうか、君があの一ノ瀬君だよね!」

 そういうと、中島さんが俺の手を取ってブンブン振った。ついでに胸も揺れた。俺は思わず目線をそらした。

「ずっと大会に出てなかったんでしょ? 復帰したの!?」

 距離が妙に近い。本当に近い。初対面の距離じゃない。俺のパーソナルスペースが溶けていく。

「つい、こないだ」

「えーじゃぁ今年の県予選は超激戦じゃーん」

 と、俺の手をようやく話した中島さんは桜木先輩に向き直った。

「そういえば、去年のメンバーはどうしたの?」

 その瞬間、先輩の顔が曇った。

「ちょっといろいろあってね。みんな辞めちゃったんだよね」

 そこで中島さんの顔から初めて笑顔が消えた。

「でも、今年二人が入ってくれたから。二人とも一生懸命だし、負けないから」

「うん、そうじゃなきゃ面白くないよ」


 ◇


 俺たちはさっそく対戦することになった。

 男子一人でシャワーを浴び、服を着て自転車の横で待つ。すぐに女子たちもやってきた。

 水着から私服に着替えた中島さんを見て驚く。ミニスカートだったのだが、その丈があまりにも短かったからだ。普段からギャル子のスカートを見て短いなぁと思っていたが、その比ではないのだ。ちょっと姿勢を変えるだけでパンツが見えてしまいそうだ。上も白い生地のシャツ一枚で、黒いブラは透けてるは、ちょっとかがんだら谷間が見えるわ。もうとにかく男子高校生の衛生上よろしくない。はっきり言って、水着姿よりはるかにエロい。

「私たちの部屋、近いからそこでやろうか」

 先輩の提案で、君津総合校の三人を俺たちの民宿に呼ぶことになった。

 民宿に戻って、一応おじいちゃんに確認をとる。

「あのすみません、この三人を入れてもいいですかね?」

 すると、おじいちゃんは「いいけど部屋じゃ狭いだろ」と言って、広めの部屋を貸してやると言ってくれた。

「ホントですか! ありがとうございます!」


 ◇


 とりあえず、最初は俺と中島さんが対決することになった。

「あの優輝君と対戦できるなんて!」

 そう言ってくれるのはうれしいが、もはやプレッシャーですらあった。昨年の県代表である彼女たちを失望させてしまうようなデュエルはできない。

「中島さんは、とにかく“いやらしい”デッキを使ってくるよ」

 先輩が笑いながら言うと、

「いやらしいって、ひどーい」

 と中島さんはおどけてみせた。

 が、とりあえず中島さんは恰好がいやらしいので、いやらしいデッキを使っていてもなにも不思議ではない。

「じゃぁ、お願いしまーす」 

 オレのサーヴァントは<ゴブリンの指導者>。

 一方、中島さんのサーヴァントは<オーラウの拷問官>。

 なるほど。中島さんのデッキは【ライブラリーアウト】か。

 TCGにおいて、相手のライフを削りきることで勝利を目指すのが一般的だ。このタイプのデッキは【ビートダウン】と呼ばれる。だが、大抵のTCGではそれ以外にも勝利の方法があることが多い。中でも相手の“デッキ切れ”による勝利は、どのTCGにもある定番ルールだ。

 “デッキ切れ”による相手の敗北を目指すデッキが【ライブラリーアウト】あるいは【デッキ破壊】と呼ばれるタイプ。

「俺は<角笛吹き>を発動……」

 安定した一連の動きをしてからターンを渡す。すると、中島さんは珍しいカードを使ってきた。

「<休戦の使者>発動」


<休戦の使者>サモン

 お互いのプレーヤーは攻撃宣言できない。

 このカードのプレーヤーのドローフェーズにこのカードを破壊する。


 最近登場したカードだが、通常の【ビートダウン】ではなかなか活躍しないカードだ。このカードで守るくらいなら、他のモンスターを呼んで攻撃した方が手っ取り早い。

 だが【ライブラリーアウト】のように、時間を稼げば勝てるデッキならば、ある程度生きてくるだろろう。

「じゃぁ<ゴブリンの先遣部隊>召喚で」

 こちらは軽いゴブリンを中心に召喚して攻めていくが、相手の妨害にあってなかなか攻撃が通らない。そうこうしている間に、相手はものすごいスピードで、こちらのデッキを削ってくる。みるみる薄くなっていく俺のデッキ。

 さらに追い打ちをかける中島さん。

「切り札を使っちゃうよぉ~! 発動、<復活の代償>!」

 そのカードに驚く。それが実際のデュエルで使われるのを見たのは初めてだったからだ。


<復活の代償>

 相手はカードを3枚ドローする。

 墓地からサモンカードを1枚手札に加える。このターンそのカードの詠唱時間は0になる。


 俺がかつてプレイしていた頃に登場したカードだが、その強烈なデメリットゆえ見向きもされていないマイナーカード。

 モンスターを復活させる効果は悪く無い。だが、デメリットがあまりにも大きすぎる。

 二枚ドローする<王の欲望>が禁止になっていることから、三枚のドローがいかに大きいかがわかるだろう。それほど大きなアドバンテージを相手に与えて、できることがモンスターの復活では割にあわないのだ――普通は。

 だが、確かに【ライブラリーアウト】とは極めて相性が良い。相手の攻撃を確実に稼ぎながら、同時に相手のデッキを減らすこともできる。

 まさかこんなシナジーが生まれるとは。さすが去年の県代表。古今のカードの特徴を理解し、新たなコンボを見出す。一流プレーヤーにしかできないことだ。

 結局、こちらは大量のゴブリンを展開できているにも関わらず、攻撃そのものを封じ込められて、そのままライブラリーアウトで敗北。

「まさか、<復活の代償>が【ライブラリーアウト】と相性がいいとは思わなかったよ」

 普通は“弱い”とされるカードが、意外なデッキで活躍することがある。これもカードゲームの面白いところだ。

「もう一回いいかな?」

 ライブラリーアウト主流デッキとは言えない。だが、一敗も許されないトーナメントでは、こういう地雷デッキにも対応する必要がある。だからこういう一流の地雷デッキ使いとの対戦は重要な経験値になる。

 特に、あの貴文は、だれも考えつかなかった独創的なデッキや戦術を多用する選手だ。彼に対抗するには、環境デッキ相手に戦える、というだけでは不十分なのだ。


 ◇


 夕方になり一同疲れてきたところで、俺たちは君津総合の面子と別れて、宿に戻った。

 素泊まりプランなので食事は出ない。なので島に一軒しかない居酒屋に向かう。どのメニューもなかなかの値段だが、ほかに選択肢がないので仕方がない。

「それにしても、君津総合の人たち、本当に強かったですね」

 ギャル子が空になったお皿に視線を落とす。

 十戦前後ゲームをしたが、俺たちは全員負け越している。特にギャル子は、結局一回も勝つことができなかった。そのことで本人はかなりプレッシャーを感じているようだ。

 代表の強さを思い知らされた半日だった。

「あの人たちに勝てるようにならないといけないんですよね」

「君津総合は県内でも特別だから。トリッキーなデッキを相手にするのは、強い人でも難しいいんだよ」と先輩がフォローする。「ギャル子ちゃんも環境デッキ相手にはかなりいい試合ができるようになってきてるから。焦らずにいこう」

「がんばります」

「ああいう相手もいるってのは知っておいて損はないけど、まずは【ゴブリン】相手に戦うことになれないとな」

 環境デッキ相手に勝てるのは十分条件ではないが、必要条件であることに間違いはない。

「明日は三人でゴブリン対決しよ」

「はい!」


 ◇


「じゃ、とりあえずシャワー浴びようか」

 風呂場は一つしかないので、同時に入れない。

「じゃぁ、女子先にどうぞ」

 俺が譲ると、

「晴夏ちゃん先どうぞ」

 先輩も譲った。

「え、いいんですか」

「うん。どうぞどうぞ」

「じゃぁ、すみません」

 自分の部屋に戻って、スマホで時間をつぶす。しばらくすると階段を上がる音がして、「お先に入らせてもらいましたー」というギャル子の声が聞こえた。

 その後また十分ほどして、お風呂終えた先輩が俺

部屋に来る。

 先輩はTシャツ姿だった。肩に透けたブラのひもを思わず凝視してしまう。

「優輝くん、お先にー」

「あ、はい」

 風呂に行くと、ふんわりとシャンプーの匂いが漂っていた。シャワーもイスも桶も一つしかない。ということは、さっきまで先輩がここに座ってシャワー浴びていたのだ。そう思うと、なんだか妙に得をした気分になった。

 手短にシャワーを済ませて、風呂場を出る。服を着て部屋に戻ろうとすると、ちょうど先輩も階段を上ろうとしていた。

「今宿の人に聞いたんだけど、展望台で星がキレイにみえるんだって」

「確かに、田舎だし絶対星キレイですよね」

「見にいかない?」

「ぜひいきましょ」

 ギャルを呼ぶために先輩たちの部屋に入ると、彼女は爆睡していた。

「晴夏ちゃーん、星見に行かない?」

 先輩が声をかけるも、目を開ける様子はない。代わりに寝言が出てくる。

「んー無理だよ」

 でた。

「んーいくら熱帯魚でも泳げないよ」

 どうやら夢の中で魚になっているようだ。しかも泳げないらしい。

「んー温泉の中は泳げないよ」

 そりゃ、泳げないだろう。

「でも頑張る……」

 やっぱり頑張るんだ。

「起こすのも可哀想だよね。まあ、明日も晴れらしいし、とりあえず今日は私たちだけでいっちゃおうか」

 それは、むしろ好都合だった。先輩と二人きりになれる絶好のチャンス。俺はギャル子の寝起きの悪さに感謝した。

 俺と先輩は二人で並んで、夜の島へ繰り出す。

「感動したいから、上に行くまで空は見ないことにしよう」

 先輩が提案した。

「了解です」

 あたりは静まり返っていた。誰もいない田舎道を、先輩と二人きりで歩く。

「風、気持ちいいですね」

「うん、気持ちいいね」

 道路にはポツンポツンと外套があるが、展望台のふもとまで来るとそれ以降、明かりはなかった。

 階段を、スマホの懐中電灯機能を頼りに昇っていく。都会と違って夜景はない。スマホで照らされた足元だけを見ながら階段を登っていく。正直普段引きこもりの俺には、この階段はキツい。

 ようやく、頂上が見えてくる。

「はあ」

 俺は大きく息を吐きだした。

「もう、優輝くん体力なさすぎ」

 先輩が俺を見て笑った。

「すみません」

 せっかくシャワーを浴びたのに、汗だくだ。

「じゃあ、せーので上見よう」

「はい」

「せーの」

 その瞬間、息を呑んだ。

 夜空は黒いもの。都会育ちの俺達はそう思っていた。でも、島の空は白い。無数の星が光り輝いている。東京ではありえない、ひっきりなしに見える流れ星。

 先輩は、ベンチに寝転がった。俺も、隣のベンチに同じように寝転ぶ。

 星空と海風だけの世界。

「流れ星って、もっと貴重なものかと思ってたよ」

「願い事し放題ですね」

 すると先輩は、空を仰ぎ見ながら、

「県大会で手札事故を起こしませんように!」

 そんなことを星に祈った。

「なんですかその願い事」

「どんなに完璧にデッキを作り上げても、カードゲームである以上事故だけはどうしようもないからね」

「せっかくなんだから“勝てますように”でいいじゃないですか」

「神様に与えられた勝ちになんて、なんの意味もないから」

 運で負けるのも嫌だが、運で勝つのも嫌。先輩はただ勝ちたいのではない。自分の力でもって、それをつかみ取りたいのだ。

 そんな先輩の言葉を聞いて、なんだか柄にもなく、宣言したくなった。

「俺、貴文に勝ちます」

 なんの根拠もないけど、勝てる気がした。雄大な自然の中で気が大きくなっていたのは間違いない。でも、それを差し引いても、今の俺なら勝てる気がした。

「先輩を絶対、幕張に連れて行きます」

「ありがとう」

 星のあかりに照らされた先輩の顔。

 いい雰囲気だ。

 なんだか。今が絶好のチャンスに思えたのだ。後先なんて考えてない。

「俺、先輩の――」

 ことが好きなんです。

 だが、その言葉は、突然の音に遮られた。

「あ、晴夏ちゃんだ」

 先輩の携帯がブルブル震えて着信を知らせていた。

「もしもし?」

『先輩ーどこですかー』

 ギャル子の声が聞こえてくる。

 どうやら、起きたら自分一人だけで、焦ったようだ。

「いま展望台だよ。晴夏ちゃん寝てたから」

「おいてかないでくださいよー」

「ごめんこめん、今帰る」

 そういって先輩は電話を切った。

「とりあえず帰ろっか」

 先輩が笑いながらいった。

「はい」

 急に体がだるくなった。思いっきりパンチしようとして空振りした感じだ。

 だが、考えてみればこれでよかったのかもしれない。告白なんてして、それこそ振られでもしたら、気まずすぎる。


 ◇


 せっかく泊まりに来たというのに、一日海ではしゃいでデュエルした俺たちには、長い夜を楽しむだけの体力は残っていなかった。何戦かデュエルした後、すぐに寝ることになった。おやすみなさいと言葉を交わして、俺は自分の部屋に戻る。

 だが、いざ電気を消して、布団をかぶってみると、いろいろなこと浮かんできて、眠りにつけなかった。

 先輩の姿が、浮かんでは消え浮かんでは消え。その繰り返し。

 そして、さっき告白しようとした自分を思い出して、死にたくなる。そもそも、今まで考えてなかったけど、先輩は彼氏とかいるんだろうか。いつもはカードのことしか頭にないって感じだけど、でもあれだけ可愛いのだ。彼氏位いてもおかしくはない。

 それこそ、もしかしたらどこかのカードゲーマーかもしれない。

 そんなことを考えていたら、どんどん眠れなくなっていく。

 そうこうしているうちに、ふと携帯を見ると布団に入って一時間が経っていた。

 もうすぐに寝るのはあきらめて、デッキでもいじろうかと思った、そんなときだ。

 隣の部屋からごそごそ音がした。決して大きな音ではなかったが、静まり返った夜に、起きている者の耳に届くには十分だった。トイレかなと思ったが、しばらくするとガラガラと玄関の扉が開く音がした。

 先輩か、それともギャル子だろうか。こんな夜中に、何の用だろう。

 抜き足で、部屋を出て玄関を出る。そして家の前に出ると、段差のところにギャル子が腰かけていた。。

「起こしちゃったよね。ごめん」

「いや、もともと起きてた」

 こんな夜にどうしたと聞こうと思ったが、白熱灯に照らされた彼女の顔を見た瞬間、次俺はすべてを理解した。

 既に拭われていたが、彼女の瞳の端には涙が溜まっていた。。

 しまったと思った。一人で泣きたかったからこんな夜中に、外に出たのか。俺は完璧に邪魔をしてしまったのだ。

 俺は泣いていた彼女の顔を視界から外すために、彼女の横に腰かけた。

「……えっと、あれだな、うん」

 なんだよ。自分でも思った。でも、言葉は簡単には出てこなかった。

「俺、もしかして今日なんか嫌なこと言っちゃったりした?」

 そんな自分本位な言葉が出てきた。どうして彼女が泣いていたのか。それが気になったというよりも、その原因が自分ではないと確認したいという。

「……なんかさ」

「うん」

「あたし、勝てるようになるのかなって」

 言われて、君津総合と別れた後、ギャル子に元気がなかったことに気が付く。

 試合が近づいている中、一人だけ勝てないその恐怖。実は、彼女はその恐怖とずっと戦っていたのだ。

 確かに、事実として今ギャル子は強いプレーヤー相手になかなか勝てないでいる。だから、「お前は強いよ」と嘘をつくことはできなかった。

 でも……

「お前は強くなるよ」

 それは俺が本心から思っていることだった。

「別にお世辞とか慰めで言ってるんじゃないぞ。カードゲームってのはな、環境が変わった瞬間、別の競技になるんだよ。だから、何年続けてようが、その環境での経験値がなきゃ勝てない」

 それがカードゲームの面白いところであり、厳しいところでもある。どんなに経験値を積んでも、環境が変れば、そのほとんどは失われてしまう。だが逆に言えば、

「この【ゴブリン】環境で、お前以上に頑張ってるやつはそうそういない。だから安心しろ。すぐに勝てるようになるよ」

 俺がそういうと、彼女は隣で小さくうなずいた。

「それに、俺が勝てるデッキ作って見せる。だから安心しろ」

 そう言ったあと、自分がそれなりに恥ずかしいことを言っていることに気が付いて、旧に恥ずかしくなった。それでごまかすように星空を見上げた。

「……ありがと」

 彼女の言葉は、満天の星空に吸い込まれていった。


 ◇


 俺は合宿から帰ってからの三日をひたすら部屋のベッドでだらけて過ごした。そして気が付けばGWも残り二日。あと二日を、全力でだらけよう、と決意を新たにした矢先だった。


晴夏――今日、暇だよね


 ギャル子からそんなメッセージが来る。


一ノ瀬優輝――お、おう


晴夏――もう再来週には試合でしょ。だから追い込みしたい


 相変わらず、ものすごいやる気だった。

 とはいえ、正直、あと一週間でギャル子の実力をどうこうできるとは思えないのだが。

 確かに、彼女は本当に努力を重ねているし、着実に成長している。だが【ゴブリン】デッキ以外への理解が全く足りていない以上、大会では苦戦を強いられるだろう。ライバルである桜華院や君津総合は、オリジナル性の高いデッキで勝負してくる可能性が高いからだ。

 もちろんそんなことは口に出さないのだが。


一ノ瀬優輝――まぁいいよ。


 そう返信すると、ものの十分で家のチャイムが鳴った。

「お前、うちに向かいながらメッセージ打ってきただろ」

「うん。押しかけるき満々だった」

 まぁ、求められれば断るつもりはなかったのだが。

「どうせ暇でしょ」

「まぁそうだけど」

 いつも通り、部屋に通して早速デュエルの準備をする。

「あ、そうだ。ちょっと報告があるんだけどさ」

「え、なに」

「クラスでさ、あたしたち付き合ってることになってるみたいよ」

 カットしていたカードが俺の手からバラバラと落ちていった。

「は?」

「毎週毎週、優輝の家に通ってるの、誰かに見られたんだって」

 どう返答していいかわからなかった。

「え、その、なんかごめん」

 なんとか絞り出した言葉がそれだった。考えてみれば、別に俺は何も悪いことはしてないんだけど。

「別にあたしはいいんだけど」

 と、彼女は一拍おいて、

「でも、優輝は困るよね」

 そんなことを言った。

「……いや、別に俺も困らないけど」

「だって、優輝は桜木先輩のこと好きでしょ」

「何を根拠に」

 俺はささやかな抵抗を試みるも、

「見てればわかる。もうバレバレ」

 一刀両断される。

「優輝さ、教室にいるときと、テンション全然違うもん」

 そんなことない、と否定することはできなかった。

「まぁ、でも先輩、カード以外に興味なさそうだけど」


 ◇


 試合を来週に控えた土曜日。俺たちは朝一でカードショップに集合した。今日は新しいブースターパック、通称新弾の発売日だ。

 TCGでは、定期的に新しいパックが発売され、プレーヤーはそれにいち早く対応していかなければならない。新弾のカード次第で、今まで強かったデッキが相対的に弱くなったり、逆に弱かったデッキが環境トップに躍り出たりする。

 だから大会で勝つには、新弾のカードが環境にどんな影響を与えるかを予想しなければ勝てない。

 今回の新しいブースターパックには四十種類のカードが収録されている。その中には、今後の環境を大きく変えるようなパワーカードが含まれていた。

 新弾を、俺と先輩は二箱、ギャル子は一箱づつ購入する。基本的にシングル買い、つまり一枚ずつ欲しいカードをショップで買ったほうが確実で安いのだが、しかしカードゲーマーたるもの、新弾が出れば、まずは箱で買ってパックを開ける快感を味わいたいものなのだ。

 店のデュエルスペースの一角で、俺たちはパックを開けていく。

 ちなみにギャル子は、箱買い初体験だ。

「あ、光ってるカードでた!」

 ギャル子が剥いたパックのカードを覗くと、新弾のトップレアが煌々と輝いていた。

「それ、一枚三千円」

「三千円!? 高っ」

 カードゲームに馴染みのないものは、紙切れ一枚に三千円は高いと感じるだろう。だが、その値段に見合うだけの強さを備えたカードだ。

「えっと、<ゴブリンの妨害部隊>?」


<ゴブリンの妨害部隊>サモンカード

 全てのアーツの詠唱時間は2多くなる。

 

 効果はお互いのアーツ使用を阻害するというもの。

 効果は相手だけでなく自分にも及ぶため、どのデッキにも採用できるカードではない。

 だが、アーツを使わず、サモンカードの連打によって勝負を決めるデッキにとっては、相手の行動を一方的に阻害できる強力なカードになる。

 特に【ゴブリン】は、アーツがなくてもサモンカードだけで様々な場面に対応できるデッキ。アーツゼロの構築でも十分強い。それゆえ、このカードの恩恵を受けやすいのだ。

「ゴブリン環境はまだまだ続くね」

 環境というのは、TCG独特の用語だ。

 トーナメントにおいて、どんなデッキが強いとされているか、を示す。

 “ゴブリン環境”であれば、ゴブリンがほかのデッキよりも強く、その使用者が多い、ということを示している。逆に様々なデッキが活躍している場合は、群雄割拠な環境であるといえる。

 今の環境は、完璧な【ゴブリン】一強状態だ。<角笛吹き>を得てからというもの、【ゴブリン】の勢いを止められるデッキはほとんどない。【ゴブリン】に勝つには【ゴブリン】を使うしかない、というのが今の環境だ。

 正直この一強環境は、俺たちにとってはありがたい。ギャル子は初心者、俺も復帰したばかりという状況で、近年使われているデッキに対する理解が浅い。だが、トーナメントで皆がゴブリンを使う、という状態であれば、ゴブリン対ゴブリン戦の経験をつんでいけば、他のデッキへの理解が及んでいなくてもさほど問題にはならない。

 もちろんゴブリン以外のデッキと当たってしまったときにボロがでるかもしれないが、群雄割拠な環境よりはそのリスクが低い。

「サモンカードを中心にデッキを構築しなおさなきゃね」

 アーツでは、スタハンというルールが採用されている。通常のTCGでは、初期手札はランダムなのだが、このゲームでは、デュエル開始の際の五枚の手札のうち、二枚をあらかじめ選ぶことができるのだ。

 そして、今回の<ゴブリンの妨害部隊>は、あまりに強力なカード。全ての【ゴブリン】デッキ使いは、確実にこのカードをスタハンに入れてくる。

 それを想定して、こちらもアーツに依存しないデッキ構築にする必要があるのだ。

 例えば、徐々に強さが認知されてきた<強者の傲慢>も、<妨害部隊>のせいで使いづらいカードになった。

 【ゴブリン】デッキの強さは揺るがないとは言え、デッキに採用されるカードは大きく変化するだろう。

 来週の県大会予選まで大きな大会はない。ゆえに、蓋を開けてみないと、どんなカードが使われるかわからない。

 少しでも多くの可能性を考慮して、備える必要がある。


 ◇


 先輩と別れた帰り道、顔見知りと遭遇する。

「おう、トレカ部のお二人じゃないか」

 影山先輩だ。今日も例によって派手な服装。やっぱり靴はとんがってる。

「先輩、来週こないんですか?」

 チーム戦は三人一組で戦うのだが、学生の公式大会では一人の交代要員を認めている。交代した選手のデッキをそのまま使うことにはなるが、自由に他の選手と交代することができる。

 彼は“幽霊部員”。つまり、一応部員ということだ。であれば、明日の大会にでる権利はある。

 幽霊とはいえ、彼の実力は確かなものだ。彼の力があれば、明日の試合はかなり楽に進められるだろう。

 だが、先輩は明日の試合に出る気などさらさらないらしい。

「俺は女の子と遊ぶので忙しいかな」

 大きなお世話かもしれないが、このファッションセンスの男と付き合う女はいったいどんな趣味をしたやつなのか。

「それに、どうせ貴文には勝てない。お前はまぐれで一回勝ったかもしれないけど、まあそんな奇跡はそうそう起きないぜ」

 確かに、影山先輩の言葉は正しい。俺が得た勝利は、初期の成熟しきっていない環境における偶然の産物だ。それは俺だってよくわかっている。

「だからまあ、貴文と当たらないことを祈るんだな」

 彼が電車に乗って去っていったあと、ギャルが質問してきた。

「白河貴文って、どれくらい強いの」

「どれくらいって、そりゃめちゃくちゃ強いけど」 

「わたし、動画見たんだけど、すごさがわからなくて」

 無理もない。初心者に彼の凄さが理解できないのは当たり前だ。

「あいつはね、メタゲームを必ず制することができるんだ」

「メタゲーム?」

「大会でどんなカードが流行るかってことだよ。このゲームでは絶対的に強いカードっていうのは存在しないんだ。どんなカードにも弱点がある。ということは、大会に出る人たちがどんなカードを使うか、それを予想できれば、その対策ができる。それができれば勝てる。これがメタゲームを制するってことださ」

 もちろんどんな競技でも、戦略の流行みたいなものは存在する。でもカードゲームほど流行が重要な競技は他にはないだろう。例えばメッシも、イチローも、羽生名人も、今も強いし、たぶん三か月後も強い。でも、アーツでは今強いからといって、今の【ゴブリン】デッキが一年後も強いとは限らない。それどころか、まったく勝てないという可能性のほうが高い。二か月に一度は新しいカードが登場し、さらに三か月に一度は制限カードの改訂が行われる。常に環境は変化していく。だからその変化を読まなければいけない。それができなければ、どんなに輝かしい戦績を持つ選手でも勝てない。それがカードゲームなんだよ」

 どんなに強いプレーヤーでもメタゲームを読み間違えれば、まったく勝てなくなる。逆に言えばメタゲームを読み切れば、ギャル子みたいな初心者でも勝つチャンスがある。それくらいメタを考えるっていうのは大事なのだ。カードゲームは、メタが九割といっても過言じゃない。

「貴文はメタゲームの天才なんだよ。その環境で皆が使うであろうデッキを読んだうえで、独創的な対策を立てる。それが常にできる男なんだよ」

「優輝は勝てるの?」

 姉ヶ崎の質問に、俺は一瞬考えてから

「まぁ、負ける気はない」

 そう答えた。


 ◇


 とうとう俺たちは県大会を迎えた。会場は幕張南の体育館。ラッキーなことに俺たちは初の公式大会をホームで戦えるのだ。

 試合開始の一時間前に部室に集合。

「おはようー今日は頑張ろう!」

「おはようございます」

 ギャル子は、露骨に緊張していた。無理もない。彼女にとっては初めての公式大会。この日のために真剣に練習してきたとはいえ、彼女はまだまだ初心者だ。

「緊張する……」

 ギャル子がそんな弱音を吐いた。

「安心しろって。俺が代わりに勝ってやるから。お前は気楽にやれって」

 とはいえ、俺にとっても二年ぶりの公式大会。大会には独特の雰囲気がある。まして、学生プレーヤーにとっては最大の公式大会だ。

 幕張はアーツプレーヤーにとっての甲子園だ。ここにいるやつらは全員、勝って幕張に行くために一年間練習してきたんだ。

 俺たちは最後にもう一度デッキリストを確認する。カードゲームの試合では、基本的にデッキの中身をすべて記して運営に提出する。途中で勝手にデッキを変更できないようにするためだ。

 大会では基本的にデッキを変えることはできない。だが決勝トーナメントまで勝ち進めば、一度だけ五枚のカードを入れ替えることができる。

「さて、これでよし」

 デッキリストを書き終え、あとはリラックスして待つ。

「ギャル子、乾パンないの」

「あるよ」

「食べようぜ」

「あたしもちょーだい」

 三人でザクザク乾パンをつまみ、一袋食べ終えたところで、そして試合開始時間の三十分前になった。

「そろそろ行こうか」

 今回会場になる第二体育館に向かう。中入ると、既に生徒と運営の社員で溢れかえっていた。

 受付を済ませると、顔見知りが声をかけてきた。

「優輝くん、おひさー」

 その明るい声は、中島さんだった。横には大野さんと、小川さん。昨年の代表校、君津総合の三人だ。

 中島さんは近づいてくると、いきなり俺の手を取って顔を近づけてきた。

「今日はよろしくねー」

 ふわっと、柑橘系のいい香りがした。中島さんは制服姿だったが、そのスカートは異様なまでに短かった。短すぎて、もはやそういうエッチなコスプレにしか見えない。

 俺を油断させるためのハニートラップかなにかなのではないかという疑念すら湧いてくる

「間違っても、あたしたちと当たるまでに負けないでよ」

「うん、わかってる」  

 と、次の瞬間だった。

 あたりの空気が変わった。

 入り口から三人の生徒が体育館に入ってきた。たったそれだけのことだった。

 その三人の中に、学生最強の男がいた。

 例によって無表情だったが、しかし彼が胸のうちにこんな思いを秘めていることは、ここいる全員が理解していた。


――お前たちは、全員僕に倒させるために、ここに来たんだ。


 と、絶対王者と目が合った。彼は、畳の上を歩く武道家のように、隙のない動きでこちらに向かってくる。

「こんにちは、優輝君」

 彼は、わずかにだが、確かに、ほほ笑んだ。

「早く戦いたいね」

「俺もだよ」

「今日は面白くなる」

 そういって貴文は受付のほうへ歩いて行った。


 ◇


 アーツ社の社員が壇上に上がる。

「これより、アーツオブサーヴァント全日本高校選手権、県予選大会を開始します」

 開会式が行われた後、正面のスクリーンに、トーナメント表が映し出された。

 一回戦の相手が君津総合高校。そして貴文の桜華院とは準決勝で当たる。

 関東大会にいけるのは、トーナメントで勝ち残った二校だけ。つまり、俺たちは去年の代表二校を倒さないと、代表にはなれないのだ。

「正直、考えられる中で一番厳しい展開ですね」

 だが、先輩は、

「でも、あたしたちの目標は関東大会じゃなくて、幕張なんだから」

 そう言い切った。


 ◇


「一回戦から当たるなんてね」

 テーブル越しに中島さんたち君津総合の面々と相対する。

 いきなりの昨年の代表校との対決だ。彼女たちの強さは、合宿で体験済み。合宿では俺たちが大きく負け越している。

 だが、こちらとて万全の準備をしている。

「それでは対戦カードを決定します」

 ジャッジの持っているタブレットで対戦順の抽選を行う。結果、中島VS姉ヶ崎、小川VS桜木、一ノ瀬VS大野、の順に対戦することになった。

「負けないよ」

 まず、第一戦はギャル子対中島。ギャルとギャルの対決は、トレカ界では異色の“ミラーマッチ”だ。

「頑張って!」

「まぁ気楽にいけ」

 それにしても、ギャル子にとっては初の公式戦の相手が、県内屈指の選手とは。

 合宿で何度も君津総合の三人と戦ったが、中島が一番やり手だと感じた。正直、プレイングスキルの差は歴然だ。今のギャル子に勝てる相手ではない。

 しかも彼女たちは環境トップデッキではなく、独自の地雷デッキを用いてくる。環境デッキ相手なら、何とか一通り戦えるようになったギャル子だが、知っているデッキタイプが少ないギャル子に、彼女たちのデッキは攻略できないだろう。

 デュエルがスタートする。

 中島さんのサーヴァントは<火力の行使者>。つまりデッキは【バーン】だ。予想通り、予想していなかったデッキタイプ。

 バーンとは、戦闘によらず、直接相手のサーヴァントにダメージを与えるカードを多用するデッキタイプだ。

 ギャル子にとっては初めてみるカードのオンパレード。中島さんがカードを出す度に、カードの効果を確認するギャル子。

 一方、中島さんは常に最善のプレイング。正直、俺でも必ず勝てるという自信はない。

 的確な対抗手段を打ち出せず、ずるずるライフを削り取られていく。

 ギャル子もなんとかゴブリンを展開し、反撃を試みるが、そのひ弱な抵抗を前に、中島さんは最終宣告を突きつける。

「<強者の傲慢>発動」

 勝敗は決した。ピッタリギャル子のライフがゼロになってデュエル終了。

「ありがとうございました」

 唇を噛み締めたような顔で、彼女は帰ってきた。

「ごめんなさい」

 そういってギャル子は頭を下げた。

「よく頑張ったよ」

 先輩がそう励ます。

「トップレベルのプレーヤー相手によく善戦したよ」

 まあ勝負はここからだ。ギャル子には悪いが、最初から俺と先輩は一敗もできない前提でここにきてる。

 続いて先輩と小川さんの戦い。

「絶対勝ってくるから」

 先輩はそう力強く宣言した。

 対戦相手は小川さん。

「よろしくお願いします」

 背が小さい(ついでに胸も小さい)小川さんだが、しかし明らかにその眼には闘志を燃やしていた。

 だが、闘志では桜木先輩負けていない。

「よろしくお願いします」

 小川さんのサーヴァントは<予言の解読者>。デッキは【予言】。デッキに眠る五枚の<予言>カードを全てフィールドに展開したとき勝利が確定する特殊勝利デッキだ。当然、完璧な地雷デッキ。

「<ゴブリンの妨害部隊>発動」

 この会場で幾度となく発動されたそのカードからデュエルがスタート。

「<封印の呪術>を発動」


<封印の呪術>

 相手のモンスターを1枚選択して発動する。その効果を二ターンの間無効にする。


 小川さんは<妨害部隊>を無効化するカードを使ってから、展開を試みる。

 やはり先輩は強い。相手が使ってくるカードは、どれもマイナーなものなのに、それを的確に捌いていく。

 環境外のカードへの理解は、一朝一夕では身につかない。アーツを第一に考えて生きている先輩の強みは、こういうところにあるだろう。

 純粋なデッキパワーは【ゴブリン】の方が上だ。

「負けました」

 小川さんがデッキトップに手を置いた。サレンダーだ。

「ありがとうございました」

 相手に礼をし、次の瞬間先輩は振り返って俺たちにVサインを送った。

「桜木先輩さすがです!」

 これで一勝一敗。

「優輝くん、あとは任せた」

 戦費はそう言って俺の方に手を乗せた。

「まあ、安心してください。勝ってきますから」

 ただカッコつけたかっただけじゃない。その言葉には、自分自身を奮い立たせる意味もあった。

 実に二年ぶりの公式戦。この舞台に、俺は戻ってきたのだ。

「よろしくお願いします」

 大野さんと向かい合う。

「よろしくお願いします」

 大野さんがメガネをクイっと上げた。

 ダイスロールで先行を勝ち取る。お互いにカードを引いたところで、サーヴァントを開示する。

 大野さんのサーヴァントは、俺の分身ともいえる一枚だった。

 青と白の甲冑を着込み、大剣を構えた少女のイラスト。大野さんのデッキは【アリスワルキル】だ。

「<アリス>の効果、カウンターを乗せます」

 そのカウンターが七つ溜まったとき、必殺の一撃を放つ。その時までに、ケリをつけなければならない。

「カードを二枚伏せてターンエンドで」

「俺のターン。ドロー。<ゴブリンの妨害部隊>を召喚。さらに<ゴブリンの角笛吹き>を召喚。効果で<先遣部隊>を手札に加える。カードを伏せてターンエンドで」

「私のターン、ドロー。<アリス>でゴブリンに攻撃。カウンターを乗せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー。<角笛吹き>の効果発動。<ゴブリンの騎兵>をサーチして、そのまま詠唱」

 俺はいつも通りの安定した展開で大野さんのライフを削っていく。

 だが、大野さんも着実にセブンスターカウンターを貯めていく。

 俺自身が熱心な【アリス】使いだっただけに、大野さんのプレイングとデッキ構築が卓越しているのがよくわかる。

「私は<休戦の使者>を発動」

 だが、デッキパワーでは【ゴブリン】が遥かに勝る。

 除去カードを的確に使って致命傷になるカードだけを防いでいく。そして<ゴブリン>の攻撃で少しづつ追い詰めていく。

「ドロー」

 大野さんがカードを引く。だが、それをデッキトップに戻して、そのまま掌をデッキに乗せた。

「サレンダーで」

「やった!」

 俺よりも、先に声を上げたのは先輩だった。それで気が付いた。去年の代表校に勝ったのだ。

 「ありがとうございました」と礼をしてから、大きい気を吐き出した。

 俺は立ち上がって、先輩たちのほうに向きあがる。

「優輝くん!」

 次の瞬間だった。先輩が抱き着いてきた。

 目の前に、先輩の顔があった。ふわっとした匂いが衝撃波になって脳に直接届く。

「やった! 優輝くんすごい!」

 細身に見えて、意外に柔らかい先輩の身体。勝ったことなんて、もうどうでもよかった。

 時間にして、実は数秒のことだった。離れるときに、また香りが鼻孔をくすぐる。

 と、別の香りが後ろから漂ってきた。

「あー去年の代表が一回戦で負けちゃうなんて」

 中島さんが俺に手を差し出す。

「完敗だよ」

 俺は彼女の手を握り返した。

「勝ってよね、白河貴文に」

「必ず勝つよ」



 ◇

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