ゴルゴちゃん13才、餃子の王将に行く。10



「…………!!」


 ゴルゴちゃんは天津飯から漂う香りで、なにが起きたのかを察した。


 卵の色が違って見えたのは、その上にかけられたあんの色合いが薄くなっていたせいだ。


 なんと、赤くない。


 ほのかに酸っぱい匂いを放つ、ケチャップベースの甘酢あんではないらしい。


 代わりに天津飯を包み込むのは、わずかに黄金色がついた、透き通るあんだった。



「塩? いや……醤油あん、か?」



 ゴルゴちゃんはそう看破する。


 おそらく──地方によって味付けが異なる、ということだろう。


 関東では甘酢あんが好まれ、関西では酸っぱさのないあんが受け入れられているのだ。



「…………」



 少し面食らったゴルゴちゃんだが、レンゲを手に取ると、さっそく天津飯をひとすくいした。


 卵の下から現れた、ずしっとした白米の手応えは、いつものそれだ。


 さて、味の方は──?


 ぱくり。



「…………ほう」



 口の中に広がる、あの甘酸っぱさが、やはりまるでない。


 けれどもやさしい醤油の風味が、卵と白米に絡んで、これはこれでよいものだった。


 たぶん中華ダシも少し効いているか。


 酸味がない代わりにしっかりと味付けされていて、なるほど白米の進む味である。


 これはこれで、厚みのある卵の層との相性もよかった。


 なるほど、醤油あんもアリである。


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