ゴルゴちゃん13才、餃子の王将に行く。1


 新幹線のぞみ号が新大阪駅に着き、慌ただしく乗客がホームに出て行く。


 その最後にガンケースを担いだゴルゴちゃんも続き、関西の地に降り立った。



「…………」



 やはり土地が変われば空気も違う、と伸ばした黒髪を撫でる風に、ゴルゴちゃんはふと思う。


 大事なことだ。


 気圧の差は、秘密の仕事にも関わってくるのだから。


 ──もっともこの大阪で、仕事をする予定はなかった。


 ここはあくまで経由地だ。


 しかし、情報屋に会う手はずとなっていた。


 今回の標的に関しての詳細な情報を仕入れてもらっているのだ。


 さて、落ち合う場所は──。



「…………!」



 ブーン、ブーン。


 制服の上に着たコートのポケットで、スマートフォンが振動する。


 着信を示すバイブレーションだった。


 ゴルゴちゃんは普段、スマホを持たない。


 それはハッキングなどで、位置情報が知られてしまうことがあるからだ。


 だからこれは今回の仕事用に準備した、個人情報の入っていない「飛ばし」のスマホである。


 一仕事終わればそのまま破棄する代物だ。


 つまりこの番号を知っている者は、間違い電話でなければ一人のみ。


 ゴルゴちゃんが事前に番号を教えた、情報屋だった。



《もしもし。……フロイライン東郷?》



 電話に出たとたん、男が向こうから話しかけてくる。


 東郷の名は、ゴルゴちゃんがゴルゴタ丘中学で使っている偽名である。

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