ゴルゴちゃん13才、新幹線のぞみ号に乗る。10


 さらにタマネギの下から、こんにゃくも姿を見せる。


 完全にすき焼きだ──。


 だが、それがいい。



「…………フフ」



 ゴルゴちゃんはゆっくりじっくり、噛み締めながら牛丼弁当を味わった。


 一気にたいらげたくなるが、それすら惜しくなるほどのクオリティなのだ。


 とにかく少しでも長く、食べ続けていたい。そんな気持ちになれる特別なお弁当だった。


 しかも付け合わせのガリが、また泣かせる。


 ──鮮烈だった。


 ガリ自体、きっと自家製なのだろう。


 風味が普通のものではなかった。とんでもなくフレッシュだ。


 もちろん濃い味付けの牛丼と、相性の良いものとして考え出された組み合わせだろう。


 これが百年の重みなのか。


 百年前のプロフェッショナルが考え、引き継がれてきた歴史の味だった。



「…………」



 それでもついには、最後まで食べきってしまう。


 残ったのは空の容器と、開けるのを忘れていたペットボトルだった。


 水を飲むことすらなく、ひたすら牛丼弁当に没頭してしまったのだ。


 それでもゴルゴちゃんは、やはりペットボトルに手を伸ばさない。


 すさまじいうまさだった。


 ここまでのものに出会えることは、そうはない。


 ゴルゴちゃんはしばし、百年牛丼の余韻に浸る。


 だが、ゴルゴちゃんもやはりプロだ。



《この電車はのぞみ号、博多行きです》



 車内アナウンスが定刻通りに走っていることを告げたときには、ペットボトルの水を飲み干し、いつものゴルゴちゃんに戻っていた──。


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