ゴルゴちゃん13才、新幹線のぞみ号に乗る。6


 しかし、車内は混雑していた。


 ほぼ満員で、新幹線は東京駅を出発する──。



「…………」



 本当は人の少ないグリーン車にしたいゴルゴちゃんだったが、さすがに中学生一人がグリーン車というのは目立ちすぎる。


 ただ、隣の席が空いているため、窮屈に感じることはなかった。


 そこにゴルゴちゃんは、お弁当とペットボトルの入った紙袋を置いている。


 まだだ。


 まだ、早い。


 ゴルゴちゃんは手を出さない。


 ──他の席ではお昼時ということもあって、買ったお弁当を早々に食べ始める者たちもいた。


 が、新幹線は東京駅を出たところなのだ。


 すぐに速度をゆるめて、品川駅に入っていく。


 すると当然、乗客の出入りがまた始まった。


 この騒がしさの中、ゴルゴちゃんは食べる気にはなれないのだ。



「あっ、すみません……!」



 むしろ奥の席に新たに乗客が来て、食事を始めていた者が、弁当をどけなければならない始末だ。


 乗り込んですぐ食べ始めるのは、素人のやることだった。



「…………」



 やがて新幹線は品川駅を出発するが、ゴルゴちゃんはまだ紙袋に見向きもしない。


 次の駅は横浜だ。


 間隔は、わずか十五分程度。


 やはり食事をするにはせわしない。


 ゴルゴちゃんはじっくりと、横浜駅を過ぎるのを待つのだった。


 なかなか姿を見せない標的を待ち構えるのと、同じことである。


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