ゴルゴちゃん13才、新幹線のぞみ号に乗る。5


 水のペットボトルを紙袋に入れて、ゴルゴちゃんは階段を上がった。


 エスカレーターもエレベーターも使わない。


 いざというとき自由に身動きが取れるよう、階段を使うのが常なのだ。


 そしてホーム階に上がってくると、ちょうど目当ての新幹線が滑り込んでくるところだった。



「…………」



 だがゴルゴちゃんは急がない。


 むしろ列を成してホームで並ぶ人たちから、距離を空けて足を止めた。


 少し待って、降りてくる乗客が改札階へと消えていくのを見届けてから、ようやく動く。


 その頃にはちょうど乗り込む客たちも全員が車輌に入っていて、ゴルゴちゃんは最後に乗り込む形となった。


 これでいい。


 指定席車輌の13号車──。


 その最後尾の席を、ゴルゴちゃんは抑えていた。


 だから混雑する通路を進む必要もなく、すぐにすっと席に座る。


 しかもガンケースは、シートの後ろの空間に置いた。


 最後尾だからこそできる特権だ。



「……フーーーーー」



 しかも遠慮せず、リクライニングすることもできた。


 座ったのは二列席の通路側だ。


 あえて窓側にしないのは、やはりなにかあったとき、外に近い方がいいからである。


 そして実は隣の窓側の席も、もう一枚のチケットで予約してあった。


 横に誰かが座ってくると落ち着かない、ゴルゴちゃんなのだ。



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