ゴルゴちゃん13才、新幹線のぞみ号に乗る。4



「お待たせしました。お持ち帰り弁当のお客様~」



 やがて五分もすれば、受付から声がかかった。


 もちろんゴルゴちゃんの頼んだ、牛丼弁当ができあがったのである。



「…………」



 柱から背を離して受付に向かえば、浅草今半の紙袋に入ったお弁当がゴルゴちゃんを待っていた。



「ありがとうございました。またどうぞ」



 にこやかに店員が見送り、ゴルゴちゃんは会釈して歩き出した。


 紙袋に触れたとき、できたてのぬくもりが伝わってきたが──まだ我慢だ。


 食べるには早い。


 これは新幹線の中で食べるために、買ったものなのだから。


 ──その新幹線の到着時刻が、そろそろ迫ってきていた。


 ゴルゴちゃんはグランフール地下の通路を抜けて、新幹線ホームへの改札口を真っ直ぐ目指す。


 ガンケースを担ぐ左手に紙袋を持ち、右手でチケットを出すと、自動改札をするりと抜けた。


 電光掲示板を一瞥し、自分の乗る新幹線のホーム番号を確認する。


 だがその前に、手に入れなければならないものがあった。


 お弁当と合わせる、飲み物だ。


 ホーム階にまで上がれば売店や自動販売機もあるだろうが──。



「…………」



 改札階の自動販売機の方が、人が少なくて買いやすい。


 だからゴルゴちゃんは、さっそく見つけた自動販売機に硬貨を入れると、水のペットボトルを買った。


 今日のお弁当は、特別なものだ。


 なるべく味の邪魔にならないよう、無味のものをチョイスしてみたのである。


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