ゴルゴちゃん13才、新幹線のぞみ号に乗る。3


 しかも『百年牛丼弁当』ならば、『¥1,404』と店内で食べるよりもリーズナブルだ。


 おそらく赤出汁がつかないぶん、値下げしているのだろう。



「いらっしゃいませ。ご注文ですか?」



 受付に顔を出したゴルゴちゃんを見て、和風な格好をした女性店員が声をかけてくる。


 ああ、とゴルゴちゃんははっきりと頷いた。



「……持ち帰りで、牛丼弁当を、一つだ」



 しかし、少しだけ躊躇いがちな態度を見せることを忘れない。


 中学生が、無理をして持ち帰り弁当に手を出した。


 そんな背伸び感をわざと演出したのである。


 すぐにコートのポケットから、千円札を二枚出した。



「はい。百年牛丼弁当をお一つ、ですね。今からつくりますので、少しお時間かかりますが、よろしいでしょうか?」



 特に訝しまれることなく、注文はスムーズに通った。


 こくり。


 ゴルゴちゃんが了承すると、さっそく会計が済まされる。



「ではこちら、596円のお返しになります」



「…………」



「できましたらお呼びしますので、お待ちくださいね」



「……ああ」



 ゴルゴちゃんは受付の前から離れた。


 のれんのある入り口の側に、通路の天井を支える、一本の四角い柱がそびえている。


 そこに背中をくっつけて、ゴルゴちゃんは待つことにした。


 こうすれば通路をときどき行き来する人の誰にも、背後を取られることがないのだ。


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