ゴルゴちゃん13才、用務員室に行く。2



 職員室のある校舎二階の端っこに、用務員室はあった。


 普段は生徒が近づかない場所である。


 なぜならここには普段から、一人の男性用務員が常駐しているせいだ。


 この学校では、教室以外の共用部分の清掃は用務員に任されていた。


 そのため生徒が教室にいる時間帯は、廊下の掃除などにここから出向く。


 そして今のように休憩時間中には、この用務員室で休憩を取っているのだ。


 ──もちろんゴルゴちゃんが忍び込んだときにも、ジャージ姿のその用務員は一人でくつろいでいた。


 部屋の中は小さなキッチンと冷蔵庫の置かれた、八畳ほどの空間だ。


 そこの一部に畳が敷かれ、冬であろうがなかろうが関係なくコタツが設置されている。


 その横で座椅子に座り、小型の薄型テレビでワイドショーをのんびり見ていた用務員が、ゴルゴちゃんと目を合わせ息を呑む。


 が、それだけで事情を察した。



「そうか。今日は、こっちを使うのか……」



 中年の用務員は、太った腹を揺らして立ち上がる。


 彼はゴルゴちゃんが学校内に潜ませた、プロの一人だ──。


 秘密の仕事の関係上、この学校でもなにが起こるかわからない。


 そんな「もしも」のために雇った、協力者なのである。


 だからゴルゴちゃんの事情も察して、用務員室から直接繋がる、もう一つのドアの向こうにそそくさと消えた。


 そこは掃除道具などを入れてある、隣の用具室である。



「…………」



 そのドアが閉じられると、ゴルゴちゃんは遠慮なく、側にあったパイプ椅子を立てかけてノブに噛ました。


 終わればどけるが、それまでは協力者であっても過信しない。


 そこまでやるからゴルゴちゃんは、プロフェッショナルなのだ。


 もちろん入って来たときに、入り口の内鍵は閉めてあった。


 あとは窓のカーテンを引く。


 ただしテレビはそのままにした。


 音声を流していた方が、盗聴を防ぐことができるからだ。


 まあ今日は、特に聴かれて困るような真似をする気はないのだが。


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