ゴルゴちゃん13才、用務員室に行く。1
ゴルゴタ丘中学に、今日も昼休みを告げるチャイムが鳴り響く。
「あーもう、お腹空いたあ!」
「おべんとおべんとっ!」
「机くっつけるよー?」
大抵の生徒は弁当を持ち寄り、教室で女子トークに花を咲かせながら昼食をとる。
もしくは一階にある購買部で、菓子パンの争奪戦に参加するかの二択だった。
「…………」
ゴルゴちゃんも普段は菓子パンで済ませるタイプだ。
もとより弁当をつくるような趣味もないし、つくってくれる家族もいないからだ。
ただし、混雑する購買部で列に並ぶなどという愚行はしない。
担ぎ上げたいつものガンケース内に、あらかじめ外で買っておいたパンやジュースを忍ばせているのである。
だけどこの日は、いつもと「違うもの」を入れていた。
「…………」
ぽつり、ぽつぽつ。
教室から出ると、廊下の窓の外に水滴が降りかかっていた。
空を覆う厚い雲から、ついに雨粒が落ちてきたのだ。
ゴルゴちゃんはいつも天気予報の確認を怠らない。
秘密の仕事にも、そのときの風向きや天候といった気象条件が関わってくるからだ。
だから今日、昼頃には雨が降ってくることはわかっていた。
そしてそれはつまり、晴れた日には出られるはずの中庭が、使えなくなるということだ。
──一人で落ち着いて食事をとるためにも、ゴルゴちゃんにとって中庭という空間は大切だった。
だが、さすがに雨の中、外のベンチに腰掛けて食べるのはおかしいだろう。
こんなときのため、ゴルゴちゃんは校内にいくつか代わりになる場所を見つけてあった。
しかし今日は──「違うもの」を食べるために、いつもと「違う場所」を真っ直ぐ目指す。
他の生徒たちの目を盗んで素早く入り込んだのは、学校の「用務員室」だった。
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