ゴルゴちゃん13才、ゴディバに行く。2


 しかし街中でも、当然のごとくバレンタインムード一色だった。


 下校中、どこへ行っても華やかな広告が目に付く。



「…………。チョコか」



 さすがにゴルゴちゃんも、気にせずにはいられない。


 チョコレート。それは魅惑の菓子だ。


 あの甘さは乙女にとっての合法ドラッグだ。


 そういえば最近食べてなかったな、とゴルゴちゃんはふと思う。



「…………」



 こうなれば無性にチョコが食べたくなった。


 だが、押し迫る2月14日のせいで──道中のコンビニのお菓子売り場には、ひっきりなしに下校中の女子学生が群がっている。


 買う買わないはともかく、チョコレートの陳列棚に皆が引き寄せられていくのだ。


 あんな中に突入する勇気は、ゴルゴちゃんにはなかった。


 いつ誰に背後を取られるかわかったものではない。


 きっと反射的に女子をぶん投げている光景が、ゴルゴちゃんの頭に浮かんだ。


 普段なら、あんなに混雑することはないのだが。


 まったくもってバレンタインとはやっかいな風習だった。


 ゴルゴちゃんはただ自分のためだけに、おいしいチョコを買いたいというのに。



「…………!」



 しかし、はたと思いついた店があった。


 あそこなら、専門店だがそんなに女子たちが列を成していないかもしれない。


 だからゴルゴちゃんはその足で、学校から少し離れた駅ビルへと向かうことにした。


 目指すはそこに入っている、高級チョコレート専門店『ゴディバ』のテナントである。


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