ゴルゴちゃん13才、伝説のすた丼屋に行く。1


 秘密の仕事をしているゴルゴちゃんだが、表向きはあくまで普通の女子中学生である。


 だから、目立つような真似は極力しない──。


 不釣り合いな場所に、一人で赴くということはないのだ。


 たとえば『伝説のすた丼屋』もその一つだった。



「…………」



 ──「すた丼」。つまりはスタミナ丼ということだ。


 毎回ルートを変更するゴルゴちゃんだが、ゴルゴタ丘中学からの帰り道の一つに、その伝説のすた丼屋が一軒あった。


 それがどうしても気になっていた。


 ゴルゴちゃんは女子中学生を装っているが、秘密の仕事の関係で、日頃から鍛錬を欠かさない。


 仕事がなくとも、常に重いガンケースを持ち歩くようにしているのも、その一環だ。


 故に、甘いものや、精のつく食べ物には弱いところがあった。


 すた丼とは、ある情報屋の話によれば、ガツンとにんにくをきかせた濃い味付けが売りらしい。


 一度食しておきたいと思っていたのだが、スタミナ系を売りにする店は、乙女には入りにくい。


 普通の牛丼屋に、ふらりと立ち寄るのが女子的にはぎりぎりのラインだろう。


 そう思い、毎回店の前を素通りするのが常となっていたのだが。



「…………!」



 たまたまこの日、店から出てきた客と遭遇し、ゴルゴちゃんは不意打ちを食らったかのように衝撃を受ける。



「おいしかったねー」



「ねー!」



 それはなんと、若い女性客二人だった。


 なんということだろう。


 別に、女子が食べに来てもおかしいことはない店だったのだ!


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