ゴルゴちゃん13才、築地に行く。14



「またいらしてね、お姉ちゃん」



「ありがとうね!」



 老夫婦に見送られ、会計を済ませたゴルゴちゃんは店を出た。


 そのときにはもう、いつもの冷たい空気をゴルゴちゃんは身に纏う。


 階段を降りていけば、追っ手の姿はどこにもなかった。


 気配ももちろん感じられない。


 ゴルゴちゃんはもうここから逃げたと思い、離れていったのだろう。


 そして場内市場の方へと向かえば──。



「オー、マタ会エマシタネ!」



 CIAの元長官が、ちょうど場内から出てくるところだった。


 にかっと白い歯を見せて、再び接触してくる。


 ──彼の側にももう、他の追っ手の気配はなかった。


 うまく行列を使い、まいてきたのだ。


 それだけではないようで、近づいてくる元長官の手には、『吉野家』と書かれた袋が提げられていた。


 どうやら寿司大だけでなく、ついでに他の店も食べ歩いてきたらしい。


 その行動で、「本当に単なる観光で来た」と思わせられたのかもしれない。


 築地場内には吉野家の「一号店」が存在し、ある種の聖地と化しているのだから。



「ネギダクダク一丁ー!」



 持ち帰りの吉野家の牛丼を掲げて見せて、元長官は魔法の呪文のように、一号店でしか通じないオーダーを口ずさむ。



「コレ、親切ナアナタニ、オ土産デース!」



「……けっこうだ」



 ゴルゴちゃんは丁重に断った。


 もとより元長官も本気ではない。オー、と困ったように頭を撫でるが、それは演技だ。


 元長官はまた道を尋ねるふりをして、小脇に挟んでいた旅行雑誌を広げた。


 ようやく本題に入れそうだ。



「用件を聞こう……」



 ゴルゴちゃんは秘密の仕事の話に入るのだった。


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