ゴルゴちゃん13才、築地に行く。10



 メニューの下に書いてあったが、どうやらこの店では、食事をすればドリンク類が少し安くなるらしい。


 それに、ゴルゴちゃんは入ってきたとき、カウンターの上にあったレモンを目ざとく見つけていた。


 大きくて立派な、いいレモンだ。


 あれを使えばさぞかしうまいレモンスカッシュができるだろう。



「はぁい、先に出していい?」



「…………」



 こくりと頷けば、おかみさんがカウンターの方へ去っていく。


 もしかしたらドリンクは、マスターではなくおかみさんの担当なのかもしれない。


 ──それにしても、ここはいい喫茶店だった。


 注文した品が届くまで、たまに窓から下を覗きながらも、ゴルゴちゃんはゆったりとした空気を堪能する。


 老夫婦の人柄が出ているのだろう。


 三人の男たちもやかましく騒がず、くつろいでいる様子だ。


 すぐ真下に見える雑踏が嘘のように、ここにはとても穏やかな時間が流れていた。



「レモンスカッシュ、お待たせね~」



 やがてゴルゴちゃんのもとに、レモンの輪切りが乗せられた、たっぷりのドリンクが運ばれてくる。



「…………!」



 すごい。ゴルゴちゃんは一目で見抜いていた。


 上に乗る輪切りのレモンは、囓りやすいように薄切りだ。


 しかしドリンクは、その輪切りに勝るとも劣らぬ、見事なレモン色だった。


 たっぷりの果汁をそのまま炭酸に混ぜた証である。


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