ゴルゴちゃん13才、築地に行く。8



 しかし、しばらくは時間を潰した方がよいだろう。


 ゴルゴちゃんは小さなビルの二階にある、レトロな扉を押し開いた。



「いらっしゃい~」



 店内はこぢんまりとした造りで、いきなり円椅子の並ぶカウンターがあった。


 そこはしかし、半分くらいが仕込みの材料や食器で埋め尽くされている。


 どうやらここは老夫婦二人だけで切り盛りしている、小さな店らしい。


 カウンターの向こうではマスターが黙々と調理をしていて、給仕役のおかみさんがゴルゴちゃんに笑顔で声をかけてきた。



「お一人様? 今は空いてるから、お好きな席にどうぞ」



「…………」



 おかみさんは奥に広がった、窓際の席を示した。


 狭い店内だが、それでもいくつかテーブルが並べられ、壁一面がガラス窓となっていた。


 そこには、築地で仕事をする者たちだろうか? 三人の日焼けした男たちが、コーヒーを飲みながら歓談していた。


 それ以外に客はなく、ゴルゴちゃんは男たちから離れて、窓際の席に腰を下ろした。


 ──ここからなら、よく下の様子が見て取れた。


 追っ手がまだうろついていれば、すぐにわかるだろう。


 それに脱出するときも、ガンケースでガラスを破れば簡単だった。



「はい、メニューね。決まったら教えてね、お姉ちゃん」



 おかみさんがメニュー表と、お冷やを置いて離れていく。


 さて、ではなにを頼もうか──?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る