ゴルゴちゃん13才、築地に行く。7


 築地場外市場の人口密度はものすごい。


 紛れ込むにはこれほど適した場所はないだろう。


 追尾してくる二人の気配が、さすがに慌てたのをゴルゴちゃんは感じ取る。


 このまま鮮魚店や乾物屋の間にある、狭い路地にでも入れば、あっさり振り切ることができるはずだ。



「…………」



 だがゴルゴちゃんは表情には出さないものの、少々不機嫌だった。 


 さっきの玉子焼きのせいもあるだろう。


 ──空腹のナイフが、ゴルゴちゃんの胃袋をちくちくと刺していたのだ。 


 だからゴルゴちゃんは、ある作戦を思いつく。


 路地に逃げ込むのではなく、見つけたのはとある看板だ。




『コーヒー&スパゲッティ フォーシーズン 2F』




「…………!」



 それは喫茶店「4SEASON」の入り口を示すものだった。


 狭い階段を上がった先にある、築地では知る人ぞ知る店だ。


 ぬかりなく下調べをしておいたゴルゴちゃんだからこそ、見つけられたような場所にある、そんな喫茶店だった。


 その階段に飛び込めば──どうやら追っ手は二人とも、ゴルゴちゃんをあっさり見失ったらしい。


 階段の上から見下ろす雑踏の中を、スーツ姿の男たちが急いで通り過ぎていく。


 フ、とゴルゴちゃんはかすかな笑みを浮かべるのだった。

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